眩しい/sgr ページ26
買い物帰りにすぎるくんに会ったから、一緒に帰ることにした。夕暮れ時の住宅街を通り抜ける。ランドセルを背負った子供たちが、私たちを追い抜いた。西日が眩しくて、私は俯きがちに歩いた。
「荷物持つで」
「うん、ありがとう」
どれくらい、経ったかな。すぎるくんと一緒に過ごして。私はどれくらい、すぎるくんに好きを伝えていたかな。もしかしたら足りてないかもしれない。
「晩御飯俺作ろか?」
「うん、食べたい」
「よっしゃあ! めっちゃ美味いの作ったる!」
声が大きいから、通行人がこちらを見ていた。すぎるくん、静かにしようねと子供に言うように言えば、しゅんとしながら口を尖らせる。そして、すぎるくんは立ち止まった。
「あんな」
「うん」
カラスが遠くで鳴いていた。私たち二人の影は伸びていく。すぎるくんの顔が西日に照らされて赤く染まる。いや、西日のせいではないかもしれない。
「こんなところで、言うのもどうかと思うんやけど」
やっぱり好きだ。真剣な顔が好きだ。一番好きな、顔かもしれない。勿論笑った顔も好きだけれど。
「その、な……」
「すぎるくん」
「はい」
かっこ悪いところも好きだ。好きが溢れていく。たくさんの好きが。
「結婚しようよ」
時が止まったみたいに、世界から音がなくなって。すぎるくんの顔がみるみるうちに、困惑していくのが面白くて。
「俺が言おうと思ったのに!」
びりびりと鼓膜が破れるくらいの声量で、すぎるくんが叫ぶのだから、住宅街の色んなところに響いていたと思う。きょろきょろと目を動かしていて、返事はなかなかやってこない。
「すぎるくん、言うことあるでしょ」
「結婚します!」
また大きな声でそういうのだから、通行人にびっくりされている。私はけらけらと笑ってしまった。
「帰ろっか」
「絶対に……」
幸せにするから。手を繋いで帰ろう。これからは恋人同士ではない。夫婦になるのだから。明日も貴方の帰りを待とう。これからもずっと。
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作者名:ぷりん | 作成日時:2020年11月11日 13時