【短編集】それを愛という【実/ｼ兄/者】 (ページ24)

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密かに消える/すーさんページ24

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行方不明になった上司を探している。頼りがいのある上司で、いつも周りの人はあの人の活躍に一目置いていた。でも彼は、その内ここに来なくなった。それは何故？連絡をしても大丈夫だとしか返ってこない。その内連絡は返ってこなくなって、誰もあの人を、すーさんと呼ばれたあの人の行方が分からずにいた。みんなは奥さんと何かあったって言うけれど。仕事熱心で、家庭を顧みなかったすーさん。だから私はすーさんの家を訪問したのだけれど。

「……誰もいない」

数日前から家を開けているようだった。奥さんがいないのもおかしい。すーさんに何かあったのかもしれない。もしこの探りがバレたら怒られて始末書物だろうが、それでもいい。あの人は私の尊敬できる人だったのだから。

「君は優秀だから、私なんてすぐに追い抜かれてしまうよ」

そんなことありませんよ、とすーさんに返事をしたのは数ヶ月前。努力を認められて嬉しかったことを覚えている。父のような暖かさと、人間としての優しさを持っていた。それなのに、行方を眩ませたのは。もっと調べなくては。私しかすーさんを助けることができないかもしれない。

「車がない」

家に車がないということは遠出しているのだろうか。奥さんも一緒に？夜逃げ？そんなことをする人だろうか？

「大切な人は、しっかり見てあげなくては駄目だよ」

突然、その言葉が私の頭の中に響く。何故。家に立ち居ろうとすると、頭が痛む。これ以上入ることができない。

「すーさん……」

早く戻ってきてください。何かあったのならちゃんと言ってください。心配しています。玄関前まで来たが、頭痛が酷く、これ以上は進めない。その場にうずくまる。

「また、来ますね……」

よろよろと立ち上がり家を後にした。希望を抱きながら。また会えると信じて。それから数日後のことだった。そのまた会えると言う希望が、私にとってとても、酷く胸を傷つける希望になるなんて。今の私は知る由もない。