日常風景/sgr ページ3
休みの日になるといつも彼が私に世話を焼く。例えば今日。今日はとても寒いからひざ掛けを出して「寒ない? 俺ここにいようか?」って私の隣に座る。まだいいなんて一言もいっていないのに。でも許してしまうのは、彼が私の顔を見て頬を緩めているから。無意識なんだろうなと思う。でも寒いからここにいようかって言うのも変な話じゃない?
「本当は一緒にいたいだけでしょ」
バレた? と子どもっぽく笑って、自分の頬を搔く。照れているのに、いたずらっ子のような笑み。寒くなってきたから、こうやってお互いにくっつける口実が増える。彼は素直にくっつきたいなんて言わない。ううん、言えない。照れてしまうから。そんなとこが可愛らしいとも言えるし彼らしいとも言える。
「寒いと動きたないな」
「じゃあ寒いからずっと一緒にいようよ」
「なんもできんやんそれ」
すぎるくんが言ったのに。なんだかんだ私から離れないのだから、そういうことじゃないの。ソファの上に置かれた私の手をぎゅっと握った。私よりも体温が高い。その熱が私へと伝わってくる。いろいろやることはあるのだけれど、私が何かしようとすると決まって彼は俺がやるからと遮ってしまうのだ。私のことを子どもか何かだと思っているのかな?
「動かないと私、家から出られなくなっちゃうかも」
「……ええんちゃう?」
「ええ?」
嘘やでー、と笑っているけれど、今の声音は嘘に聞こえなかった。時々こういう所があるから、ちょっぴり怖いのだけれど。ちょっと、頭のネジが外れちゃう時。でも同時に、私の頭のネジも外れてしまう。
「すぎるくんがお世話してね」
「任せといて!」
言ってることはおかしいのに、これがとても日常的に思えた。いつもの事みたいに思えた。よし、と私は立ち上がる。
「もう終わり?」
「すぎるくん洗濯して。私掃除する」
「はあい……」
どこか残念そうな声の他に、小さな声も聞こえた。
「今日も失敗かあ」
残念、まだすぎるくんの言う通りにはならないよ。
あまりにも欲が見える/ランドレ→←今日は帰らない/lntn
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作者名:ぷりん | 作成日時:2020年11月11日 13時