こわれているのは/sgr ページ19
私はまだ馬鹿みたいに希望を抱いているのだろうか。手をつけられない二人分の食事。一つはどんどん冷たくなっていく。食べられないまま朝まで残っている。当の本人は私を無視して、すぐに部屋に引き篭った。私はソファで毎日眠る。どうしてこんなことになってしまったのかな。普通だったのに。ずっと普通に笑いかけてくれてたじゃない。ソファでうつらうつらとしていると、水を飲みに来たのか彼が、すぎるさんがリビングへとやってきた。ソファで横になっている私を見て、ぎょっとした顔をした。
「なんでまだおるん……」
「すぎるさん……私なにかしましたか？」
「何言うとんねん……」
私の腕を引っ張りあげて無理矢理立たせた。そのまま私のことを玄関まで引きずる。
「やめ、すぎるさん……！ 痛い……！」
「はよ出てってくれ……！」
そのまま私は外に放り出されて腰をぶつけた。すぎるさんは怖い顔をしている。どうして？ 私何か悪いことした？
「ごめんなさい、すぎるさん私……」
「もうやめてくれ俺を呼ぶの……」
今度は怯えた顔をして私を拒絶する。何がすぎるさんをそうさせてしまったの？ 私の手を振り払い、ドアを閉めようとしたところを必死に止める。
「お願い！ 教えてすぎるさん！ どうして……私たちあんなに……」
「俺ら……他人やろ？ なあ俺間違ったこと言ってる？」
ぴし、と私の体が硬直する。そして私の体は後ろに倒れ、そのままドアは閉じられた。嘘よ。嘘。すぎるさんがおかしくなったから私にそんな嘘をついているの。ねえ思い出して。私と彼の記憶を。
「あれ……？」
すぎるさん、一度でも私に笑いかけたことあった？ なんですぎるさんの家にいるんだっけ？ 私が、勝手に。
「すぎ、るさ……」
どん、とドアを叩かれて私の方が跳ねた。拒絶された。拒絶を示された。
「また明日、来ますね」
すぎるさんが私を拒絶するわけがない。あんなに優しいすぎるさんが。瞼の裏には、いつも優しいすぎるさんが、私に笑いかけていた。
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作者名：ぷりん | 作成日時：2020年11月11日 13時
