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夜を統べる者/ジャック ページ14

※怪人、ハロウィンネタ

 世間はハロウィンで浮かれているし、私も仮装なんかして気分が浮かれていた。家に帰ったら一人だということを忘れて。友達といた時間が長かったせいか、一人になると途端に寂しくなってしまう。こんな時には別の友人に連絡でもするのが吉だが、生憎、ハロウィンである土曜日は予定があると言われて事前に断られている。唯一の男友達なのにこの馬鹿、とスマホに表示されるメッセージを罵る。ベランダに出て煙草に火をつける。この部屋禁煙だけど寂しいから吸っちゃお。

「わっ、なに?」

 目の前を何かが通り抜けて消えていった。カラスかな? 気にも留めずに私は煙草を吸い込む。また何かが目の前を通り抜けた。

「鳥じゃない……」

 ジグザグな羽の形。そんな鳥いたっけ? いないよね。じゃあ何? 一匹二匹と舞うその生き物。目を凝らすとよく見えた。

「蝙蝠だ……」

 蝙蝠は無数に集まって郡を成す。私のベランダの方へ、ゆっくりと近づく。煙草の火を咄嗟に消して部屋に入ろうとすると、私は蝙蝠の中にオレンジ色の何かを見た。あれは……カボチャ? 瞬間、蝙蝠の群れは散らばり、道を作るように、ベランダの手すり目掛けて広がっていく。目の前に現れたのは、カボチャ頭の、得体の知れないもの。

「こんばんは、お嬢さん」

 やけに鼻にかかった声は、友人の声に似ていた。

「誰?」

 カボチャの目がオレンジ色に光る。私に手を差し伸べてきた。

「頼まれて、貴女を空の旅へ連れて参ろうかと思いまして」
「……なにそれ」

 完全に不審者じゃん。ついて行って大丈夫? なんて考えているけど本当はワクワクしてしょうがない。それになんだか、初めて会った気がしない。その手を私は取った。

「ハッピーハロウィン!」

 ぽん、と魔法のように私の体は宙に浮いて、カボチャ頭の彼の元へ。空の旅へ。やっぱり、このカボチャ頭は友人に似ている。

「ねえ、どこかで会ったことある?」
「……ない」

 その日、ハロウィンの悪戯に合った。

幸福とは/8→←狼なんて怖くない/sgr



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作者名:ぷりん | 作成日時:2020年11月11日 13時

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