路地裏の怪物/バヂリスク ページ12
※怪人、ハロウィンネタ
世間はハロウィンだなんだと騒ぎ立てる中、私は人混みを避けて帰宅していた。ハロウィンだろうが私は仕事だ。それに一緒に仮装して騒げる友達もいない。路地裏に通り掛かった時。その暗さに一瞬通り抜けることに躊躇いを感じたが、早く家に帰りたいという気持ちからすぐぬ躊躇いをかき消した。こつん、とヒールの音が響く。
「……?」
足元を何かが通り抜けた。こんな場所だし野良猫とかがいてもおかしくないだろう。気にせず歩みを進めると、明らかに、私の足首の辺りに何かが纏わり付くような感覚があった。恐る恐る足元に目を向けると、黒い影のようなものが、私の周囲をぐるぐると、まるで獲物を見つけたように囲んでいる。
「ひっ」
私の足首からあがってこようとしている。短い悲鳴を上げた。何これ、なんて思っているのも束の間で、どんどん私に纏わり付いてくる。助けて、と声を出そうとしたその時だった。
「え……」
影は突然逃げ出していく。何かに怯えるみたいに。ざっ、と地面を蹴る音が背後から聞こえる。
「……危ないよ、こんな日にこんな所を通ったら」
「……う、」
深緑色で纏われた邪悪な姿。思わず思い切り悲鳴を上げそうになったが、この怪物のような奴は影を払い除けたみたいだった。
「早く家に帰りな。今度は喰われるよ」
私は怪物に背を向けて、そのまま歩き出した。邪悪な姿とは裏腹に、とても優しい声色だった。助けてもらったのかな、私。
「振り返っちゃ駄目だよ」
何かを潰すような音が聞こえて、私は言う通りに振り返らなかった。路地裏を抜けて人通りのある道に出ると、私は、なんだったんだろうあの人、と路地裏を振り返る。
「……え?」
そこに通ってきた路地裏はなかった。狭い隙間だけがそこにあった。あれはなんだったの。ハロウィンが見せた幻? ポケットの中でスマホが震えた。それは、仲の良い、先輩からのメッセージ。
「あんま寄り道して帰んなよ」
どうしてそんな心配をしたのか、今の私には分からない。
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作者名:ぷりん | 作成日時:2020年11月11日 13時