虎の娘《５》 (ページ18)

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それから一旦休憩になってみんなは楽屋に戻って行った。

全員が戻ったのを確認してから私は静かに客席の方に行く。

近付いてきたことに気付いた母は立ち上がった。

A 「…今日は何？」

まだ少しアイドルモードが残っているのか、いつもの母への口調より少し柔らかくなっているのは自覚があった。

母「Aあんな笑顔出来たんだね、今まで散々傷付けてきてごめん」

A 「そんなこと聞いてない。何の用かって言ってるの」

口調は柔らかくても母に対しての不信感が消えた訳では無い。

若干睨みながらそう聞く。

母「…宮近くんにアイドル辞めさせてって話したら一度Aのアイドル姿見てからにしてくださいって言われて。…あの子、本当にAのこと思ってくれてるんだね。私の言うことにはちゃんと全部頷いてくれたけどAのことは俺が守るって目してた」

いつの間にかステージに戻ってきていた宮近を見ながら母がはっきりそう言い切る。

母「…良い仲間もったね」

A 「何それ」

母「今までちゃんと私の言うこと聞いて成績上位のキープも全部頑張ってくれたんだもんね、良いわ。満足するまでやりたいことやりなさい」

お父さんが居た時ぶりぐらいに見た優しい笑顔で目を見て言ってくれる母に泣きそうになっているのが分かった。

A 「…良いの？」

母「打ち合わせだけであんなに楽しそうなの見せられて辞めさせられるほど私も鬼じゃない。ただちゃんと真面目にやってね」

その言葉に頷いてお礼を言って小走りでステージまで戻る。

A 「宮近良いって」

宮近「ん？」

A 「だからアイドル続けてて良いって」

興奮したまま言うと宮近は一瞬そのテンションに着いていけていない反応をしたけど、すぐに理解して喜んで客席の方に一例をした。

宮近「え、でもなんで？割と本気でアイドル嫌いって感じだったのに」

A 「私も分かんない。けど良いって！やった！」

そして楽屋に戻ってからうみにも同じように報告をしてまた喜び合って一緒に会場を出た。