虎の娘《３》 (ページ10)

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手紙に書いたのは、入所直後からずっと頼りきってきたことへの感謝と宮近の好きなところ。

例えば「誰に対しても平等に接してくれる」とか「自然と空気を明るくしてくれる」とか。

学歴の割に作文は苦手だから私の思いがちゃんと伝わっているか分からないけど、宮近が嬉しそうだからそれでいい。

何より宮近への思いを文章で表せられるわけが無いことなんて宮近が一番分かってくれていると思う。

A 「あ、ねえ昨日うみの家行って忘れ物しちゃったんだけどちょっと送ってくれない？」

宮近「人使い荒いね」

そう言うと手紙を読んでいた宮近が荷物をまとめて一緒に駐車場まで向かってくれる。

ちなみにこれは真っ赤な嘘。

そもそも昨日はうみだけがオフで会わなかったし、基本帰る前に忘れ物は確認するからうみの家に私のものは無い。

場所をうみの家にしたのも、私だけが残る設定にしてスムーズにうみの家に向かってもらうようにしたのも全部如恵留の計画。

「Aちゃんの演技力次第だよ」と言われてプレッシャーだったけど、何とかうみの家に向かえそうで安心している。

宮近「…結構家行ってるの？」

変に話すと墓穴を掘りそうで黙っていると、宮近が話しかけてきてくれた。

A 「いや、めっちゃたまに。…行く頻度気にした方がいい？」

宮近「ん～いや？(笑)だって家でしょ、誰も見てないだろうしちゃんとイチャイチャしな」

A 「ちゃんとイチャイチャって何…」

そもそも家に遊びに行っても基本ゲームだから正直特別恋人同士だという意識はみんなが言っているほど無い。

宮近「ちゃんと諦めつくぐらいウザいぐらいイチャイチャしてあげて。幸せになってあげて」

誰のことを考えて言っているのか、伝言のようにそう言う宮近にどういう意味か聞こうとするとちょうどうみの家に着いた。

宮近「すぐ家帰る？」

A 「…え、なんで。暑いでしょ、入ろうよ」

まさかこんなところでつまずくと思わなかったけど、車の中で待とうとした宮近を何とか説得して一緒にうみの家に入った。