虎の娘《３》 (ページ29)

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私の荷物も持っているから本当に帰るはずはないけど、スタジオを出てもうみは居なくて走って事務所のドアに向かう。

うみは普通に二人分の荷物を持って歩いて事務所を出ようとしていた。

A 「…うみごめん、ありがと…」

中村「まって何わざわざ走ってきたの？(笑)」

息切れ状態で疲れ切っている私を見て笑っているうみ。

私一日中練習してついさっき終わらせたばっかりなんだよ、走らせないでよ。

中村「そんな焦らなくても待つのに」

そう言いながらまっすぐクレープ屋さんのあるショッピングモールに向かっている。

A 「…あ、うみ私の荷物持つよ」

中村「良いよ、全然重くないし。お前逆に何持ってきてるのこれ」

さらっとそう言ってクレープ屋さんに着いて慣れたように私の分の注文もしてくれる。

そして、いつからか夜遅くなった時の定番になった東京の夜景全てが見える席に座ってふたりで食べる。

中村「あ～ほんとに疲れたときの甘いものっていいね」

満足そうにそう笑っているのを見て私も今日の疲れが全部吹き飛んだ気がする。

中村「今日このために頑張ったと言っても過言ではない」

A 「ゲームは？」

中村「ゲームは生活の一部だからやって当たり前なの」

当然のようにそう言い切る。

どれだけハードな練習をしても毎日しっかりゲームをしているみたいだけど、仕事中はちゃんと集中してるしこうしてふたりの時間も作ってくれる。

キャラ的にひたすらダラダラしているイメージが強いみたいだけど、切り替えはちゃんとしてるし要領良いよな…なんて今はにこにこ笑ってクレープを頬張っているうみを見て思う。

中村「なんかもう帰る気力ないな…」

A 「わかる。仕事終わりの人がいっぱい居る電車乗るの面倒臭い」

中村「じゃあ俺ん家来る？(笑)」

その言葉が本気なのかノリなのかは分からなかったけど、何かを言い返す気力すら残っていなかった。