虎の娘《３》 (ページ22)

今日:1 hit、昨日:14 hit、合計:46,524 hit

. ページ22

・

まちゅは泣きはしなかったけど、ずっと表情が暗かった。

松倉「…俺が言ったって言わないでね。みんな一生懸命隠してるから」

不意に私の方を見てそう言ったまちゅの言葉に思わず頷く。

松倉「元太の幸せって何なんだろうね。ほんとちゃかみたいにさっさと前向けばいいのに。好きなまま隠してたってしんどいだけなはずなのに」

その言葉には何も言えなくてただまちゅの方を見つめる。

しばらく何も言えないまま時間が過ぎて、撮影が長引いていた組のしめちゃんとうみと元太が帰ってきた。

中村「もうお弁当食べちゃった？」

松倉「俺は食べたけどAはお腹空いてなかったって」

松田「…え、しんどいの？大丈夫？」

さっきの話を聞いて何となく気まずい気持ちになっていたけど、みんなは何も変わらなかった。

だから付き合い始めた当初うみと元太がピリピリしてたのか、なんて咄嗟に思いつくほど頭の回転は早くなかった。

七五三掛「てかまつくは一人で食べたの？(笑)」

松倉「だって俺はお腹空いてたんだもん」

中村「ちょっとぐらい我慢しろよ(笑)」

松田「Aちゃん俺と半分こする？」

何も変わらずいつも通り騒がしいみんな。

この元太の笑顔もまちゅが言っていた無理して作った笑顔？

いつから強がっていたのか分からないからなんとも言えないけど、その笑顔はいつも通りで自然に見えた。

松田「…Aちゃん？大丈夫？」

中村「元太と半分こは嫌だって」

松田「Aちゃんはそんなこと言わないから！！」

ふたりで言い合いをしながらお弁当のところまで行って騒がしく選んでいる。

松倉「…誰にも相談出来ないからってAにぶつけちゃってごめんね。元太の本音が分かんなくなっちゃっただけでみんな前向こうとはしてるしAは海人と幸せになってくれたら十分だよ。やっぱり気にしちゃうよね、ごめんね」

私のところに誰も居なくなったタイミングでまちゅがそう話しかけてくる。

何となくこの前宮近に言われた言葉の意味も分かった気がした。