虎の娘《３》 (ページ44)

今日:1 hit、昨日:8 hit、合計:46,452 hit

. ページ44

・

ひたすら泣き続ける私をうみは何も言わず抱きしめてくれた。

中村「…ちゃんと言われたの、それ」

主語はお互い一度も言っていないけど、多分うみには完璧に伝わっている。

私は静かに首を振った。

A 「年末年始にソロコンをやるとしか言われてないんだけど、私だけですかって聞いたらトラジャで居られるのは限りあるって覚悟した方がいいって…」

中村「あ～、それで脱退してソロデビューってことか」

A 「…そんなの分かんないじゃん、」

私ははっきりその場で聞いたのに、今聞いたら活動に支障が出るということは間違いなくそういう事なのに何故か咄嗟にうみの言葉を否定してしまう。

中村「…Aのソロデビュー説は加入前からずっと今もファンの方から言われてるからまあおかしくはない」

A 「…私は嫌だ。トラジャじゃないなら活動したくない」

中村「わがまま言うなよ(笑)」

何度も別れを経験してきたからなのか私ほど執着心の無さそうな余裕のある笑顔が余計に辛かったし傷付いた。

A 「まだはっきり言われてないもん、信じない」

中村「…俺も信じない。まず可愛がってくれる人と可愛がれる人と頼れる人がそばに居ないと生きていけない奴がソロでやっていけるわけないじゃん。大人だけでAのこと守りきれるわけない。」

相変わらずはっきり言い過ぎだけどその言葉は純粋に嬉しくて、うみに言って良かったと思った。

中村「…なんかその言い方ソロコンの出来次第で決める的な感じな気もするけど、どっちにしても俺はAのことトラジャに残して欲しいですって言うつもりだけど良い？」

まっすぐそう聞いてきてくれるうみの言葉に頷く。

中村「後悔しない？マジでソロデビューって案すら出ないぐらい言う予定だけど」

A 「…まって何言う気？(笑)」

中村「あ、笑った。…正直ソロデビュー説は見る度に不安になってたし嫌だけど、二度と会えない訳でもないし専属振付師にでも何でもなるからマイナスに受け取っちゃダメ。とりあえずソロコン決定おめでとう」

うみはそれだけ言うと立ち上がって荷物を持って楽屋を出た。