虎の娘《２》 (ページ44)

今日:34 hit、昨日:4 hit、合計:68,726 hit

. ページ44

・

話を聞いているとひかりちゃんはまだこの仕事に就いてから一ヶ月も経っていないらしく、今日は打ち合わせだから一人で来ただけらしい。

ちゃんとした振り付けはひかりちゃんの先輩にあたる方がして下さると説明された。

山田「…まずは、曲から決めないといけないんですがしてみたい曲などはありますか？」

手こずってはいるけどやらなければいけないことはしっかり理解して効率的に動いていて説明も分かりやすかった。

何より一ヶ月足らずで一人で打ち合わせを任されるということは相当要領のいい子なんだろうと何目線なのか分からないことを思っていた。

七五三掛「山田さんから見て俺たちってどんな感じが合うと思いますか？」

無茶ぶりともとれるその質問に一瞬戸惑ったような表情をするけど、すぐに真面目に考え始める。

山田「…格好良いんですけど可愛さもあると思うのでイメージカラーピンクみたいな、癒し系？の曲のほうが合ってるなとは思います」

松倉「例えば？」

無茶ぶりを続けるふたりにひたすら考えているひかりちゃん。

思わず助けてあげたくなるけど、何でもかんでも助ければ良いというわけでもないと指導係時代の宮近から学んだ。

あの時のことを宮近は「余裕が無かった」と言うけど、あれは宮近なりの優しさで自分で壁を乗り越える強さを教えてくれたんじゃないかと思っている。

山田「…KinKi Kidsさんの『フラワー』とか」

ひかりちゃんがそう提案した途端ふたりは黙った。

山田「ダメ…ですか？」

自信なさそうに俯くひかりちゃんを今すぐ抱きしめて励ましてあげたいけど、ふたりが何を考えているのか分からないから何も出来ない。

松倉「いや…ただそれを俺たちだけでやったら多分怒られると思います」

七五三掛「センスはめっちゃ良いけどこれは全員でやるべきですね(笑)」

ふにゃっと笑って認めたふたりのことを見てひかりちゃんはどこか安心したような表情になる。

ふたりに受け入れてもらえて嬉しそうなひかりちゃんを見てさっきからずっとどこか昔の自分とひかりちゃんを重ねていることに気付いた。