虎の娘《２》 (ページ43)

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そして言われていた時間より10分ほど早く着いて適当に三人で話す。

松倉「何選抜なんだろうね、これ」

このメンバーで舞台系に立ったこともなければ、プライベートでよく遊ぶメンバーというわけでもない。

表現の仕方も同じ括りにされることは少ない。

共通点といえば私がよく「かわいい」と言うぐらい。

七五三掛「割と本気でわかんない」

A 「王道アイドル系、とか…」

そもそも王道アイドルが何なのかも分からないけど適当に言ってみる。

七五三掛「じゃあちゃかちゃんいるよ多分」

松倉「ぶっちゃけ王道アイドルならちゃかとAのふたりの方が絶対いい」

七五三掛「え、ちゃかちゃんとAちゃん良いじゃん！エモい！」

完璧に話が逸れたふたりのことを話の輪から外れて眺めているとひとりの若い女性スタッフさんが来た。

A 「おはようございます！よろしくお願いします！」

私が挨拶をしたのを合図にしてふたりも立ち上がって挨拶をする。

スタッフ「そんな、かしこまらないでください(笑)」

ふわふわとした雰囲気で資料を確認したりパソコンを見たりしている姿は小動物みたいで可愛い。

A 「私、この事務所に入ってから男性の方とお仕事することが多かったのでなんとなく嬉しいです」

慣れていないのか準備に時間がかかっているのを見て雰囲気を堅くしないようにそう話しかけてみる。

スタッフ「…あ、そうなんですか！何かとご迷惑をお掛けしてしまうと思いますがよろしくお願いします」

A 「お名前なんて言うんですか？私のことはAでもなんでもいいので良かったら名前で呼びたいです」

スタッフ「山田ひかりです。ではAさんとお呼びしますね」

A 「え～、じゃあ私ひかりちゃんって呼ぶんでAちゃんにしてください」

礼儀はしっかりしているみたいだけど、やっぱりこの仕事には慣れてないっぽい。

プレッシャーを与えないようにというのもあるけど、シンプルに緊迫した空気が苦手だから明るくするために図々しいと思いながらも距離を縮める。