虎の娘《２》 (ページ5)

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ふたりとも変装も何もしていなかったから何回か振り返られた気もするけど、気にしないふりをしていた。

七五三掛「…あ、カラオケ行く？」

目的もなくひたすら歩き続けていた時、突然しめちゃんがそう提案してくれた。

A 「いいじゃん、それがあった」

七五三掛「そろそろ普通に疲れてきたから(笑)」

A 「疲れた？休憩する？この辺どこにカラオケあるのかわかんないし…」

どっちが年上なのか分からない言い方でそう言うと静かに首を振られた。

七五三掛「この辺のカラオケ何回も行ったことあるから俺分かるよ。割と近いから大丈夫」

そして何の迷いもなく前を歩いてくれて、あっという間に着いた。

受付も慣れたように全てしてくれてスムーズに部屋まで入る。

七五三掛「ドリンクがそこの角左に曲がったところでトイレはその突き当たりにあるからいつでも行っていいよ」

A 「…慣れてるね」

さっきまでずっと何も考えずぽわぽわしてたのに急にテキパキと準備をしてもうしっかり曲の予約までしているしめちゃんを見て呟く。

七五三掛「カラオケ行くってなったら基本ここだから(笑)逆に本当に来たことないの？」

A 「私一緒に遊ぶのって大学の子とかだから事務所の近くには来てなかった」

七五三掛「なるほどね」

納得したように頷いてすぐに歌い始めたしめちゃん。

男の子とふたりだけでカラオケに来るのは初めてだったけど、しめちゃんが少し合わせてくれたのか全く分からない曲はひとつもなくてずっと楽しかった。

A 「これって割り勘何円…？」

七五三掛「いいよ、俺が払う」

さっきご飯を食べたばかりなのにポテトとか色んなものを買っていると2で割るには難しい数字になっていて悩んでいると、さっとしめちゃんが伝票を持って行ってしまった。

A 「え、でも私の方がいっぱい食べたし…」

七五三掛「カラオケ行きたいって言ったの俺だからいいよ」

どれだけ言っても全く折れてくれなくて結局しめちゃんが全部払ってくれた。

A 「…ごめんね、ありがとう」

七五三掛「いいよいいよ(笑)今日は楽しかったありがとう」

お互いお礼を言って駅前で別れてしめちゃんとの初めてのプライベートは終わった。