虎の娘 (ページ5)

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楽屋から出て屋上に向かっているとちょうど着いたタイミングで誰かに腕を掴まれた。

宮近「お前本気で何考えてんの？」

A 「こうすればいいんでしょ」

宮近には何でも見透かされている気がして、喧嘩腰で居ないと泣いちゃう気がしてわざと強く言った。

A 「さっきの空気もそうだけど技術的にも足引っ張って迷惑かけてばっかりだしそろそろ無理かなっていうのも思ってたし宮近に言ってたこともあるしまあそろそろだよね」

宮近に背を向けたまま明るく言い切ると突然宮近に抱きしめられた。

宮近「この前は言い過ぎたごめん。お願いだから辞めないで…」

何が起きているのか分からなくて呆然としていると宮近の鼻をすする音が聞こえた。

A 「…え、泣いてるの？」

宮近「今日ずっとA暗かったし夢否定しちゃったこと謝りたかったんだけど目も合わせてもらえなくてタイミング無くて、でも帰るまでには言いたくてそれで声かけたら辞めるとか言い出すしもうなんか…」

怒っていると思っていたから強気で言ったけど、宮近のここまで弱っている姿を見ると少し申し訳なくなった。

A 「え、待ってごめん。そんな泣かせるつもりじゃ…」

宮近「なんでもいいけど俺はまだAと踊りたい」

この前とは違ってはっきりと目を見てそう言ってくれた宮近。

加入の発表すら無くてグループに居て良いのか確信が持てたことは一度もなかった私にとってその言葉は十分すぎるぐらい嬉しくて涙をこらえるのに必死だった。

それから受験のこととか少しだけ話してふたりで楽屋に戻った。

いつもはすぐに帰るみんなも全員残っていて入った瞬間視線がこっちに集まった。

A 「えっとさっきはごめんなさい。宮近と話して辞めるのはやめることになりました。けど、私今年受験生で勉強したいなって思ってて、少しだけお休みを頂きながらお仕事したいなって思ってます」

みんながどう思うのか怖くて俯きながら言い終わると、少し空気が明るくなった気がした。

吉澤「…じゃあ辞めない？」

松田「まだAちゃんと仕事出来る？やった！！」

ここまで喜んでもらえると思わなくて嬉しくて、さっきこらえた涙がこぼれると隣に居た宮近に笑われた。

そして数ヶ月後無事私は受験に合格した。