虎の娘 (ページ30)

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そのまま自分の中で解決して次の日には笑って何事もなく来るつもりだった。

でもなぜか鋭いうみのことは誤魔化せなかった。

中村「それ宮近とかに相談できんの？」

A 「何の話？」

私がスマホを投げ入れたかばんの方を見ながら言っているから何について言ってるのかは分かってる。

でも本当に誰にも相談する気はなかった。

中村「お前より何も頑張ってない奴のために傷付いて我慢する必要ないんじゃね」

A 「何言ってるの？」

中村「少なくともお前はそいつより偉いからただの小学生ぐらいの愚痴だと思えばいいんだよ」

自分の中でゆっくり時間をかけて消化していくつもりだったのに、うみのその一言で一瞬にして救われた気がした。

中村「俺はお前のこと必要だと思ってるよ」

何も言ってないのに今欲しかった言葉を全てくれた。

周りにみんなが居るのもあるし、今までの関係的にも出来なかったけど全力でうみに抱きつきたかった。

A 「…ありがとう」

小さな声でそう言うとうみは笑って何事もなかったかのようにまたスマホをいじり始めた。

それでもやっぱり傷は癒えていなくてスマホを触るのは怖かったからとりあえず寝ることにした。

気が付いた時にはもう楽屋には宮近しか居なかった。

A 「…え、待っててくれたの？」

宮近「なんか海人が『スマホ触れないだろうから電車で話し相手になってやれ』って」

いつもならこんな理由で一緒に帰ってもらうのは遠慮するけど、今日は少しでも長く味方でいてくれる人のそばに居たかった。

宮近「…彼氏と別れたって設定で良い？」

A 「設定ってやめてよ(笑)」

言い方的に宮近も何となく分かってるんだと思う。

察してるかもしれないけど、誰よりもメンバーの笑顔が好きな宮近にはこんなこと言いたくなかった。

宮近「元カレの愚痴聞きましょうか」

A 「どういういじりなのそれ」

宮近「スマホ触れないってことは別れても束縛激しい系男子？」

A 「まって、本気で言ってる？」

宮近「な訳ないじゃん」

本気のトーンで元カレの話をしている気がしたから心配になって聞くと真顔で否定された。