余命宣告はハッキング出来ますか 2【降谷零/安室透】

72 ページ22

看「すみません、もう面会時間は

降「仕事ですので、.......ご協力下さい」





全く
あの子のせいで何回目の職権濫用か

ナースステーション以外は非常灯くらいしか明かりが付いていない院内を抜けて、両親に来ないで欲しいと遠回しに言われたばかりの病室の扉をゆっくりと





「..........」





......相変わらず静かな部屋に聞こえて来るのは呼吸音だけ


あの時、毛利探偵事務所で毛利小五郎のパソコンを拝借した時
酷く苦しそうにして......
下手したら命に関わったかもしれないのに、"頑張った"って.......





降「そんな簡単な話じゃなかっただろ.......」





首を絞めていたのと同じだと考えると余計に罪の意識が重なり、
もしかしたらあれが病状を悪化させたかもしれないとよぎり、
"頑張った"褒美が水族館30分だった事実がまたチクリと





ガラッ





看「あ......心拍などのチェックだけさせて頂いてもよろしいですか？」


降「どうぞ」





顔を突っ伏していた病床脇から起き上がり、"そのままで結構ですよ"との言葉に甘えてまた椅子に座り直す





看「Aちゃん、きっと良くなりますよ。ケアをする時はちゃんと話しかけながら行うんですが、私達の声が聞こえてる気がします。数々の患者さんを見て来た私が言うんですから、間違いありません」

降「......そうですか、ありがとうございます」

看「ではごゆっくり」





......看護師が一礼して病室を出て行ったのを確認してから取り出したのは適当なペン

立ち上がって、その横たわる足元に周り、ブランケットを僅かに捲って露出させた足


.......いつの間にかかなり汚くなっているペディキュアの上に硬いペンの芯を当てて

グッと





「........」





.......押し当てれば、意識がある状態なら痛みに反応するはずだった





降「.......どれだけ良い夢を見てるんだ.......」





こんなに起きない程なんて





降「こっちは失恋しただとか言われてるんだぞ。だから何だって思うかもしれないが.......」





いつものように開いたパソコン
今夜読み進めたのは


"おじさん全然帰って来ない。ちょっと調べたらヨーロッパでスパイが暗殺されたってあった。私が役に立てなかったから警察だってバレちゃったのかも。でも、あんまり心配されるのは楽しくなんかないって私が一番よく分かってる。絶対帰って来るはずだし、お腹空いてるかもだからご飯作って待ってよう。お腹いっぱい食べたらきっと元気出るから。"

73→←71

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す