裏切り者のレクイエム (ページ8)

今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:970 hit

7 ページ8

主人公 side

仕事で来た中国

この地に降り立つのは久しぶりだけど、治安の悪さや街の汚さは何ひとつ変わっていない

〈(ほんと、いつ来ても汚い。)〉

ボスに娘がいる

噂によれば、中国または韓国のどこかに身を潜めて暮らしているらしい

彼からそう伝えられたのは、つい先日のこと

それ以上は彼も知らないらしく、現地の情報屋を当たってくれと

こうして今に至る

正直、どうして私がこんな面倒くさいことを

でも

2人の無念が晴らせるのなら、これで私たちの立場が変わるのなら

そう心に思い、再び歩き始めたときだった

〈？〉

若い男2人がガラの悪い男に抵抗している

ガラの悪い男は恐らくこの周辺で悪事を働いている男であろう

日のあたらない世界でしか生きてこなかったため、長年の勘で分かる

抵抗している男2人はなんとかして逃れようとするも力及ばず

でも、あの2人どこかで見たことがあるような…

まぁ、そんなこと今はどうでもいいか

早く娘のことを知ってる情報屋《にんげん》を探さないと

今度こそ歩みを進めた

ついでにガラの悪い男を始末するために

予定にはなかったことだけど

ゴロツキ『まずは目つきの鋭い彼からとしようかーーーーー…うぐぁぁぁぁぁっっっ…。』

男は意図も簡単に地面に倒れた

こんなの、ほんの数秒時間があれば十分

私は歩みを止めず歩き続けた

すると

ta『あ、あの！』

『？』

抵抗していた2人のうちの1人に呼び止められた

ta『さっきはタ、僕たちを助けてくれてありがとうございます！』

『…別に。たまたまここを通りかかっただけ。それに、ここは一般人が出入りしていいような場所じゃない。…もう二度とここには近づかないで。』

お礼を言われるようなことなんて何もしていない

自分より弱い立場の者を痛めているとしか思えず吐き気がした

ただそれだけ

でも、また同じ目に合いたくなければここには近づくな、それだけは忠告しておいた

ta『ほ、本当にごめんなさい。僕たち道に迷ってここに着いちゃって…、わざとじゃないんです！』

『…そこの通りを突き当たりまで行って左に曲がる。3つめの角を右に曲がると大通りへ行く看板があるからあとはそれに従って。』

ほんと、手間のかかる人間

ta『！あ、ありがとうございます！！』

だから、お礼言われることなんてしてないって

『……。』

ほんの一瞬だけ2人を見て私はその場を後にした

もう二度と会わないだろう

このときはそう思っていた