10話 ページ10
｢ α-ブンガロトキシン｣
｢ウフフ、正解｣
Aは生死に関わる状態にまで来ているのに冷静でいられた。それもこれも自分の存在意義を見失うこの家がそうさせたのだった。
キキョウはティーカップに新しい紅茶注いだ。辺りにパンのように香ばしく柔らかな香りが広がった。
目の前の娘を心配する素振りも見せず、助けるつもりも無いようだった。
｢ママは今この子がいるからあまり無理出来ないの｣
そして、キキョウは愛おしいものを見るように自身の腹を撫でた。横からみて分かるほど大きな曲線を描き、妊娠後期に入っていた。
体が動かない中、Aは以前その腹を触ったときに赤ん坊の胎動を感じたことを思い出した。小さくて分かりずらいものだったが、確かにここで生きていた。
そのときから、母親から｢Aちゃんはもうすぐお姉ちゃんになるのよ｣と聞かされていた。それを知ったときAは自分に弟ができるのが楽しみに思った。
キキョウは長女であるAの可能性をもっと広げたいと思っていた。
Aは生まれつき毒の耐性がつきやすい体質だった。また、自分の体で有毒なものを無害なものへと解毒する能力が高かった。Aには自覚がなかったが、キキョウは分かっていた。
そして、彼女の服毒の量や種類を増やし耐えられる限界を探っていた。きっと将来役に立つ。これも全てAのことを思っての事だった。
｢ママの思い継いでくれる？｣
｢ぅ、はっ、｣
声にならない音と息だけが漏れた。Aはすでに呼吸困難になっていた。肺の活動が低下し臓器に酸素が回ってこなくなる。意識が朦朧としてきた。
最後に愛してるわと言葉を吐いた唇の赤が鮮明に映った。
Aが目を覚ましたときには自分のベッドに寝ていた。痺れや痛みはなかったが、体がだるい様な気がした。そして傍に腰掛けていた人物と目が合った。
｢あ、起きた｣
イルミは読んでいた本からAへ視線を移し、上から見下ろした。毒で倒れた人間を見ようと来たが、特に変わった様子はなかったので暇を持て余していた。代わりに面白そうな本があったため対象を変えた。
Aが布団から腕を出すとゆったりとした服に変わっていた。袖を捲ればあれから腕に解毒剤を打たされたようで注射用の保護パットが貼られていた。
｢おはよう｣
｢おはよう｣
イルミから丸一日眠っていたと聞かさせた。しかし、Aは動く気にはなれずしばらく天井を眺めた。
そしてもう一度目を瞑った。
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マニ。(プロフ) - 連載の方とかの新しい作品とか待っています！これからもボードの方でも仲良く、ファンとして遠くから応援してます！おかか様！ (10月8日 9時) (
レス) id: e240ea4865 (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - 千凪さん» ありがとうございます。嬉しいです！ (2022年3月10日 14時) (レス) id: 9b9f4760f3 (このIDを非表示/違反報告)
千凪(プロフ) - すごく面白いです！続きがとても楽しみです (2022年3月9日 7時) (レス) id: 129c41ba6d (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - リトさん» コメントありがとうございます。感想を頂けて嬉しいです！頑張ります！更新は遅いですが今後も読んでもらえたら幸いです。 (2022年2月28日 21時) (レス) id: 9b9f4760f3 (このIDを非表示/違反報告)
リト - とても面白かったです!お話作るのが上手で尊敬してます。無理をせず更新頑張ってください。いつでも待ってます。 (2022年2月25日 2時) (レス) @page29 id: 2df230b8f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おかか | 作成日時：2022年1月23日 14時
