9話 ページ9
｢Aちゃん、どうかしたの｣
Aの向かえにいるキキョウが尋ねた。ティーポットから紅茶を2人分淹れてからAが中々口を付けなかった。キキョウの目を覆う機械的なゴーグルで表情は読み取りずらいが口元は笑っていた。
｢なんでもないよママ｣
そう言って口をつけた。ティーカップの深みのある紅色はサバラガムワだ。
どの紅茶もストレートの苦味がAにはキツかったため、ミルクティーにして飲んでいた。セットになっているケーキスタンドには、ドライフルーツ入りのパウンドケーキや小さめのチョコスコーンがあった。
｢このスコーンおいしいね｣
｢ウフフ、それママのお気に入りなのよ｣
Aはこのところ思うことがあった。それはとてもマイナスな側面だった。
誰にも吐き出すことはなく自分の中に閉まっていた。
前提としてAは家族のことが好きである。父親も母親も兄弟もただひとつで、ふたつとして同じ存在はなかった。平等な愛を貰っていた。
それでも、Aはこの家にいる意味が時々わからなくなることがあった。何に対してもイルミと比べてしまう自分が惨めに思えた。
イルミは優秀だから父親と仕事に行った。
優秀だから跡継ぎになる。家族全員に期待されている。自分も頑張っているはずなのにいつも先にいる。
同じ血が流れているはずなのに自分がどんなに努力してもイルミには及ばない。
Aはずっと家族と一緒にいたい、でも辛いからいたくないという相反する不安定な足場の上に立っていた。少し指で押せば簡単に崩れていきそうだった。
だから、Aはミルクを入れて苦味を紛らわせるように自分の気持ちを隠した。そしてまたひとつ、ケーキスタンドにあるスコーンに手を伸ばした。
その時だった。
突然手に、腕に、上半身に力が入らなくなった。Aは自分の体を支えることが出来なくなり、ガタンと音を立ててテーブルに突っ伏した。
｢あら、ちょっと入れ過ぎちゃったかしら｣
これは神経毒だった。コブラ科のヘビが持つ毒だ。
神経伝達を攪乱し、骨格筋の活動を停止させる。それにより横隔膜が麻痺することで呼吸困難に陥り絶命するといったものだ。
キキョウがそれをミルクに仕込んでいた。日頃から摂取していたものだったが、こんなに症状が顕著に出るのは初めてだった。
これはAの体内でも分解しきれない量の毒が入った証拠だった。いくら耐性がついていれど、処理能力が間に合わなければどうすることも出来なかった。
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マニ。(プロフ) - 連載の方とかの新しい作品とか待っています！これからもボードの方でも仲良く、ファンとして遠くから応援してます！おかか様！ (10月8日 9時) (
レス) id: e240ea4865 (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - 千凪さん» ありがとうございます。嬉しいです！ (2022年3月10日 14時) (レス) id: 9b9f4760f3 (このIDを非表示/違反報告)
千凪(プロフ) - すごく面白いです！続きがとても楽しみです (2022年3月9日 7時) (レス) id: 129c41ba6d (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - リトさん» コメントありがとうございます。感想を頂けて嬉しいです！頑張ります！更新は遅いですが今後も読んでもらえたら幸いです。 (2022年2月28日 21時) (レス) id: 9b9f4760f3 (このIDを非表示/違反報告)
リト - とても面白かったです!お話作るのが上手で尊敬してます。無理をせず更新頑張ってください。いつでも待ってます。 (2022年2月25日 2時) (レス) @page29 id: 2df230b8f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おかか | 作成日時：2022年1月23日 14時
