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4話 ページ4

そして、走り続けて20秒ほど経ったあと、Aは後ろからイルミがくる気配を感じた。イルミもAの背中を視界に捉えた。

このままなら、さっきと同じ結果になるだろうとイルミは思っていた。しかし、Aが方向を変えたあと視界から消え、見失った。

Aには逃げ切る秘策があった。自主練習をしていたときに、見つけた抜け道だ。一見分からないが、そこを行くと敷地の外に出られる門へと続いていた。

以前は使われていたようだが、長い間放置されて草木が侵食していた。しかし、それが姿を隠すのに好都合だった。

Aには、どうにかしてイルミに勝ちたい気持ちがあった。



しばらくしてAはさすがに逃げ切ったと思い、後ろを向いた。
すると、自分の影の上から大きな影が被さったのが見えた。突如異様な臭いがし、危険を感じ振り返る。

Aの前方に現れたのは、全身が毛でおおわれた四足で歩く獣だった。体長5〜10mはありそうなこの大きな動物は、この家の番犬であるミケだ。侵入者は容赦なく殺害、排除するよう訓練されている。

異様な臭いもミケからであることがわかった。Aは番犬がいるのは聞いたことがあるが、見るのは初めてだった。


「A様、どちらに行かれるのですか」


もう少し近くで見てみようとAが一歩踏み出したとき、すぐそばで執事に声をかけられた。この背の高いメガネを掛けた執事はゴトーだ。長年この家に仕えている。


「こちらまで降りてこられると、お母様がご心配なさいますよ」
「ごめんなさい。イルミと遊んでいただけなの」


いつの間にか執事の屋敷の方まで来てしまっていた。ゴトーは屋敷の方から走ってくるAを見かけてここまで来たようだ。ゴトーは怒っている様子はなく、Aは安心した。彼女がこれ以上どこかへ行く意思がないことを示すと、お送りいたしますと言った。


「A」
「あ」

ゴトーと共に戻ろうとしたとき、前からイルミがやってきた。Aは追いかけっこをしていたことを思い出して、気まづい気持ちになった。


「帰るよ。じゃあねゴトー」
「お気をつけて」


Aは勢いよく掴まれた手からイルミは怒ってるように思った。あのラインを超えてしまったことを少しだけ反省した。イルミは放ったらかしにされたことよりも、Aが自分に気を使って何も言わないことに腹が立っていた。


今回の勝負は制限時間まで逃げ切ったAの勝ちに終わった。

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マニ。(プロフ) - 連載の方とかの新しい作品とか待っています!これからもボードの方でも仲良く、ファンとして遠くから応援してます!おかか様! (10月8日 9時) (レス) id: e240ea4865 (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - 千凪さん» ありがとうございます。嬉しいです! (2022年3月10日 14時) (レス) id: 9b9f4760f3 (このIDを非表示/違反報告)
千凪(プロフ) - すごく面白いです!続きがとても楽しみです (2022年3月9日 7時) (レス) id: 129c41ba6d (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - リトさん» コメントありがとうございます。感想を頂けて嬉しいです!頑張ります!更新は遅いですが今後も読んでもらえたら幸いです。 (2022年2月28日 21時) (レス) id: 9b9f4760f3 (このIDを非表示/違反報告)
リト - とても面白かったです!お話作るのが上手で尊敬してます。無理をせず更新頑張ってください。いつでも待ってます。 (2022年2月25日 2時) (レス) @page29 id: 2df230b8f3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おかか | 作成日時:2022年1月23日 14時

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