検索窓
今日:122 hit、昨日:244 hit、合計:104,707 hit

45話 ページ45

自由は少ないが、いいことに設備は充実している。ただやたらに広いこの敷地内で体を動かしたい気分になる。
そして、Aは自室を抜け出して庭に向かった。



「あれ?カルトひとり?」


Aは庭に向かう途中で、ひとり佇むカルトが視界に入り声をかけた。姉の声に振り向いたカルトは「うん」と言った。

Aがこのくらい幼いときは護衛も兼ねて執事がついていたものだが、辺りを見渡してもその姿は見当たらない。
それに、この時間帯は両親の部屋にいるはずなのだが。

当の本人は焦っていたり泣き喚いていたりすることはなく至って普通だ。また、何も持っておらず、部屋を抜け出した目的は不明である。

Aはそばに近寄りしゃがんで、小さな迷い人と目線を合わせる。


「どうしたの?」


Aの手にすっぽりと収まる、その未成熟な手を優しく握って尋ねた。それに対し、カルトは口を開きかけて何かを言おうとしたが口を噤んだままだ。

無数の選択肢がある質問に自分の答えが定まっていないようである。または、難しく考えすぎているのか、上手く言葉が出てこないのかもしれない。

大きくてぱっちりとした瞳がこちらをじっと見つめている。Aは言葉を変えてもう一度トライする。


「私と何かする?」


そして、今度は首を縦に振って「する」と言った。
Aはだいぶ歳の離れた兄弟と意思疎通ができて嬉しく思った。また、純粋ゆえに素直な言動がたまらなくかわいかった。Aが歯を見せてニコッと笑うと、カルトも少しばかりか表情が緩んだようだった。


「お外で遊びたい」


そう呟くように言ったカルトがぎゅっと両手を握り返した。Aはそれに応えるように、「よーし!しゅっぱーつ」とあの元気キャラクターの口調を真似して立ち上がる。

ふたりは手を繋いで歩き出した。



「今日はお日様出てるね」などと話しながら石畳の道を通って庭に来た。ここにはたくさんの種類の遊具が設置されている他に、人型の的やそれに突き刺さるシースナイフがある。

Aが小さい時はここに来てままごとをしたり、花束で冠を作ったりしたこともあった。しかし、そのとき大量に咲いていた白い花はどこにも見当たらない。
大方、新しい遊具に敷地を占拠されて邪魔になったため、刈り取られたのだろう。

46話→←44話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (90 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
250人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

マニ。(プロフ) - 連載の方とかの新しい作品とか待っています!これからもボードの方でも仲良く、ファンとして遠くから応援してます!おかか様! (10月8日 9時) (レス) id: e240ea4865 (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - 千凪さん» ありがとうございます。嬉しいです! (2022年3月10日 14時) (レス) id: 9b9f4760f3 (このIDを非表示/違反報告)
千凪(プロフ) - すごく面白いです!続きがとても楽しみです (2022年3月9日 7時) (レス) id: 129c41ba6d (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - リトさん» コメントありがとうございます。感想を頂けて嬉しいです!頑張ります!更新は遅いですが今後も読んでもらえたら幸いです。 (2022年2月28日 21時) (レス) id: 9b9f4760f3 (このIDを非表示/違反報告)
リト - とても面白かったです!お話作るのが上手で尊敬してます。無理をせず更新頑張ってください。いつでも待ってます。 (2022年2月25日 2時) (レス) @page29 id: 2df230b8f3 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:おかか | 作成日時:2022年1月23日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。