玖-23 ページ37
＊
｢……あの子の時と同じだよ。
出来ることなんてない。
だったら全部忘れちゃおうよ、夢乃だってその方がきっといいだろうし。
もうすぐお別れだ〜なんて考えながら過ごすの、夢乃だって望んでないよ。
今まで通り楽しくやろーよ｣
｢……るせぇ｣
｢？｣
｢うるせーーっ！そんなの知るか！！
世界がどーとかできることがねーとか関係ねぇ！！
夢乃がもうすぐ消えちまうってんなら、俺が助ける！！
今度こそ！そんだけだ！！
俺は諦めねーぞ！忘れてたまるか！｣
｢……！そ、そうよ！
夢乃のことなんて、知らないことばっかりで……もしかしたら、最後の最後まで何もしないで見てるだけは嫌！
私、花子くん達が敵になろうと 絶対に夢乃を助けてみせるから！！｣
光くんの言葉に揺さぶられて、私も花子くんに抗議する。
何があっても、夢乃は絶対に私の友達だから……手を尽くしたい。
それは、紛れもない本心……よね。
｢諦めない、ねえ……
口では何とでも言えるよね｣
｢なっ……によ！！｣
｢なっ……んだとォ！？｣
再び、盛大な舌打ちが聞こえた。
舌打ちの主は茜くんだった。
｢あのさぁ、ちょっといい？｣
突然声をかけてきたかと思えば、花子くんの胸ぐらを掴んで綺麗に床にぶん投げた茜くん。
物凄い音が聞こえたけど……花子くん、大丈夫かしら……？
｢っしゃー！！｣
｢これ、お前さん達……｣
嬉しそうな声をあげた茜くんは、手をはらいながら口を開いた。
｢根性論は信じないけどさ。
絶対無理だなんてやってみなくちゃ分からないだろ。
少なくとも諦めた奴に望みを叶える機会は来ない、それだけは確かだ｣
｢茜くん……｣
｢蒼井先輩……｣
｢そうだよね、アオちゃん！！｣
｢蒼井先輩？｣
さっきまではかっこよかったのに、葵の名前を出したことによって 一気に感動が薄れてしまった。
本当に葵のことが好きよね……茜くんって。
｢八尋さん、源後輩！｣
｢うぉっ、はい！｣
｢は、はいっ！｣
突然茜くんに名前を呼ばれて、肩が跳ねる。
茜くんは、手に持っていた懐中時計を見えるように垂らしてから言葉を続けた。
｢この時計を手に入れた時から、僕はアオちゃんの為だけにこれを使ってきた。
ずっとそうするつもりだった。
でも今回だけは特別｣
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