玖-9 ページ22
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「確かに、最近アオちゃんは何かに悩んでるみたいなんだ。でも僕にはそれを言ってくれない。
幼なじみである僕に心配をかけまいと……なんて健気な!!」
確かに幼なじみだと逆に話しづらいことも多いとは思うけどそれだけは無い、そう思った。
そんな僕の冷めきった視線にも気づかずに蒼井は話を続ける。
「とにかく、『好きな人が出来たの……♡』とかだったら、早いとこ相手を消さなきゃいけないからね!
……幼なじみとして、応援してあげなきゃいけないからね!」
言い直しても怖くて仕方がありません。
笑顔で言いきった蒼井の手には未だにバットが握られていて、指摘した光が寧々に口を塞がれていた。
「やべー」
本当にヤバい、この男。
─
───
─
そして、僕達はこっそり葵の後をつけることになった。
「いい?コッソリ見張ってアオちゃんの悩みを突き止めるんだ」
「「「「はーい」」」」
葵は掃除当番らしく、1人で箒でゴミを掃いている。
……のを、褒め倒しながら傍観するクラスメイト。
「オレは君のモップになりたい!」
そう告白した男子生徒は、蒼井の釘バットによって空の彼方へと飛んで行った。
君のことは忘れないよ、3秒くらい……
そして次に、外に出た葵は園芸部で育てているらしい草木に水をあげ始めた。
「君の植木になりたい!」
傍を通ったついでに告白をした運動部の男子生徒は、蒼井の手によって帰らぬ人となった。
被害者が増える……
そして着替えてカバンを手にした葵は廊下を移動していた。
……そのついでに告白していった男子生徒は、華麗なツッコミと共に床に埋まった。
コンクリじゃなくて良かったね……。
「分かっていたことだけど、なんて容赦のないモテ方なの……これが真のモテ女……!」
以上、葵の動向をさぐっていた寧々の言葉でした。
確かに行動ごとに告白されるとは……それに蒼井からの告白も付け足したらえげつないことになりそうだ。
「あれ?ホールに入って行っちゃった」
「え?あ、ホントだ」
バレないようにこっそり僕達もホールの中に入る。
「ここって確か、演劇部とか管弦楽部とかが発表の時に使う場所よ……
園芸部の葵がこんな所になんの用事なのかな……」
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