捌-10 ページ13
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花子くんの説明が始まり、黙っていてと言われたので喋ることも出来ずにただ花子くんの言葉を聞く。
数十秒後、なんの前触れもなくブツン、と静寂が訪れた。
｢やっばりダメだったか……最低限のことは伝えられたと思うけど、大丈夫かな……｣
｢寧々、大丈夫だよね？｣
｢まぁ……ヤシロが全然違う扉を開けたりしたら大変になるけど……助けるよ｣
｢……それならいいんだけど……｣
─
───
─
『5時30分になりました。
外で遊んでいる子供達は、気をつけておうちに帰りましょう。
繰り返します』
夕日が射し込む、とある教室。
聞き覚えのある音楽を頼りに扉を開いた寧々の目の前には、旧校舎の教室に辿り着いた。
夕焼けチャイムの弟と、優しいセミの鳴き声が合わさって聞こえてくる。
『5時30分になりました。
外で遊んでいる子供達は、気をつけておうちに帰りましょう』
｢や……やったあぁあ！夕焼け放送！やっぱりね、絶対聞いたことあると思って……！｣
飛び跳ねて帰還に喜んでいると、ガタンという音が聞こえた。
しっかり耳に届いたその音に動きを止める。
｢……夢乃、じゃない？｣
｢はっ……花子くん！？｣
教室の窓際……カーテンの裾を握った見覚えのある少年が座り込んでいた。
｢花子くん｣と呼ばれた少年の腕には 新しめの傷があって、じわ……と血が流れていた。
それを目ざとく見つけた寧々は、あわてて少年に駆け寄る。
｢それ怪我！？
痛そう……どうしたの？
花子くん……泣いてたの？｣
少年の目には確かに涙が溜まっていて、指摘されたと同時に粒が頬をつたった。
あわてて手の甲で目元を擦った少年は、慌てて教室を飛び出した。
さながらシンデレラのように、ロケットのストラップがついた鍵を落として。
｢鍵……？
ねえ待って、これ……！｣
｢あれ、それ普の鍵じゃない？｣
少年と入れ違いになって教室に入ってきた、黒髪の少女に声をかけられる。
その少女に返答する前に、ぱっと空間に現れた白杖代によって寧々は回収された。
髪を揺らす少女は、突如目の前から消えた寧々に目を見開いた。
床に落ちていた日めくりカレンダーは、1969年の7月をさしていた─────
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