10話 思い出す ページ11
(※主人公視点に戻ります)
「ん････」
「あ、起きた？気分はどう？ソニック、二日も眠ってたんだよ」
「歌が･･･。Aが歌っていたのか･･･？」
「聞こえてたの。
うん、私の歌。ソニックがうなされてたから楽になるようにと思って･･･」
「あのときの歌はお前が････そうか･･･。一度会っていたのか･･･」
ソニックは何か納得したようにぶつぶつ言った。
「あのとき･･･？」
「覚えていないか？桜の木の下で･･･」
＊
満開の桜の木の下に笑顔があふれていた。
――あの幸せな思い出には、続きがあった。
私がみんなに歌を披露していると突然爆風が起こった。
「わっな、なに！？」
「見つけたぞサイタマ！！！今日こそ俺と――」
「歌ぐらい静かに聞かせろよ」
煙幕の間から黒い人影が現れたと思ったら、次の瞬間には地面に人型の穴ができていた。
サイタマがやったのだ。
＊
「あ･･･。思い出した･･･あなたあの時の･･･
一瞬過ぎて顔を覚えてなかったけど、ソニックだったんだ･･･」
「なあ･･･。もう一度、あの歌を歌ってくれないか。」
頼む･･･。
顔をそらして言ったソニックの表情には辛そうな気持ちが溢れていた。
そんな顔が見ていられなくて、思わずその頭を撫ぜた。
「･･･。俺は子供じゃない」
言いつつ、嫌そうにはしていない。
「･･･嫌な夢でも見た？」
「･･･」
「言わなくてもいい。だけど、少しでも楽になるのなら全部吐き出してもいいんだよ･･･」
「俺は･･･」
ソニックが口をきゅっと結ぶ。
刹那、ソニックの手が伸びてきて私は簡単に押し倒されてしまった。
今度はしっかり目が合う。
ソニックの瞳はやはり辛そうだった。
「何故お前はそんなに優しいんだ。
俺は見ず知らずの赤の他人なんだぞ。」
見つめ合ったまま私の上でソニックが言う。
「それが、私にできることだから。
･･･一人でも多くの人の心を軽くするのが
私のせめてもの罪滅ぼし･･･だから･･･」
「罪だと･･･？」
そう。
本当はこの喫茶店をやっているのも
人に目いっぱい優しくするのも
癒しの歌を歌うのも
私が今なお犯し続けている罪への償い。罪滅ぼし。
「･･･自己満足･･･なんだけどね。
ごめんね、これ以上は言えない。
だけど、貴方を慰めることはできる。ソニック」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 23人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ナビィ(プロフ) - 続きが気になる、設定の思想が強くてとても好きです (2022年12月18日 22時) (
レス) @page16 id: e35ee85d42 (このIDを非表示/違反報告)
しわ(プロフ) - もるかさん» ありがとうございます！コメント嬉しいです！！！ (2018年3月11日 12時) (レス) id: f999ed7858 (このIDを非表示/違反報告)
もるか - 設定がとてもいいですね！ (2018年3月11日 1時) (レス) id: e3e8e90bb6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しわ | 作成日時：2017年12月16日 0時
