→続き ページ9
「ここな，21時ジャストに公園の電灯が消えるんよ」
規定された時間までは知らなかった。
スマホの画面にくぎ付けになっていた彼女は，ふと顔を上げて公園を見渡す。
彼女の発言通り，数秒経つと，タイミング良く公園内の電灯はポツリ，ポツリと徐々に消え始める。
あっという間に公園内は，お互いの顔もはっきりとは見えないほどの薄い闇に浸食された。
「ほらね」
Aは得意そうに俺にそう言った。
「冬は空が高くて澄んどるなぁ」
彼女の言葉で上空へと目を向けると，思わずゴクリと息を呑む。
電灯が消えたせいもあるのか，たしかに星々がはっきり煌めいている。
オリオン座は星座を構成するベテルギウスは勿論，オリオン座大星雲までもがよく見えた。
俺たちふたりの顔をほのかに照らすのは，空に浮かぶ星々のみになった。
オフィス街や明るい電光掲示板等，外部の人工の光が強すぎるせいか，テレビのドキュメンタリー番組のような極圏の満点の星空を観測するまでには至らないが，普段ならきっと拝めないような景色を堪能した。
あたたかい無言の中，真横に座るAの密かな息遣いが，妙に耳に張り付いて離れなかった。
「なあ」
手を伸ばせば簡単に手が届く距離にいるAに，緊張と不安で高鳴る鼓動が聞こえていないことを祈って，
「───今日のアレ。なに自分で自分の首絞めてんねん」
彼女の情緒を案じて，石を投じる。
今なら教えてくれそうな気がしたから……
俺はそれにつけ込んだ。狡猾な自分に辟易しながら。
「…そうするしかないやん」
すこし言葉に詰まりながらも，ポツリと呟く。
「今更，“私も好きでした”なんて……後手にもほどがあるやろ」
自嘲するよつに発せられた彼女の言葉にひどく胸が痛む。
やめろ，その言葉は俺に効く。
「後手じゃあかんの？」
「今回はもう可能性ゼロやん」
「分からんよ，そっから意識してくれるかもしれんやん」
本心から，自分の境遇から，正直な気持ちを述べた。
俺だって後手の不利は理解はできる。
だけど，───
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作者名：AKIRA | 作成日時：2019年1月29日 1時
