【wrwrd!】うずみびの慈【短編･中編】 (ページ8)

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ふと時計を見ると，短針は6を指し示し，針同士は一直線になっている。

「私たちもそろそろ帰ろか」

Aが突然切り出す。
いつもより早い切り上げのように感じたが，Aの心中を案じるとそれもいい。
その提案を肯定し，そそくさと帰る支度を調えた。

「ねえショッピくん，ちょっと付き合ってや」

コネシマさんを含めた三人で遊びに行くことは何度かあったが，なんだかんだAから二人きりの誘いを受けるのは初めてであった。
普段なら，無駄に仲の良い二人の会話や笑顔を横目に見て，くだらない嫉妬心に胸を焦がすだけだった。
だから，突然降ってきた幸運，背中投げかけられた魅力的すぎる提案を断りはしない。

それだって，普段と変わらない声調だったもんだから，ほんの少し舞い上がってしまう。
まあけど，せっかく誘ってくれるのなら，そんな悲しそうな顔じゃないときにしてほしかったな。なんて，振り向いたときに視界に入ってしまった，少し俯く君の表情の影を見て思ったんだ。

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「は～～～ほんまに楽しかった！！！ありがとうなっ！」

繁華街に赴いて，少しばかり食べ歩いたあとの半ば充足した心身のまま，カラオケの二時間コースを決めこみ，またまた食べ歩く。
すこし疲労の溜まった身体に休息を与えるため，俺たちは座るところを求めて通りを抜けた先にある人気の少ない公園に来た。

まさかAがあんなに食べるとは……
小食なイメージは完全に払拭されたが，これが取り繕わない自然体のAなのかもしれない。
そんな姿も俺には魅力的に映ったが，馬鹿な思慕は報われない。
しかも，激しい音割れとともにカラオケで熱唱したのは総じて失恋ソング。
……もう俺が懸念せずとも確定じゃないか。

「ちょっと待っとってな」

学校を出てから時間も経ち，冷え込んだ空気が身体を包み始めてきていた。
少しばかりは良いところを見せたいなんて年相応らしいことを思う自分にうんざりしながら，なにか飲み物をと思い，ベンチから立ち上がる。
公園の隅で眩しく蛍光色を発する自販機に並ぶ冬限定のラインナップから，温かそうな甘いものを求め，小さなペットボトルの該当ボタンを二度押す。
ベンチに座り、子どものように足をプラプラさせて待っていたAに、二つのうち一つを手渡すと，両手でそれを包み込んだAの顔がみるみる綻んでいく。

「あったかぁ…ありがとうな」

温かな甘味を喉に流し込むと，Aがスマホの画面を確認してから呟く。