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*
────ねえ。
その子じゃなくてさ。
「私が綺麗な宝石を細かく抱いて，瞳の中にねじ込むなりしたら，シッマは私のこと見てくれる？」
こちらとて自嘲を纏って言葉を投げる。
────疵も，血も，摩も，
この際，不要な痛みだ。
「ん？あぁ，もちろん。そのあと全部取り除いてやるわ」
稚拙で，馬鹿な，たとえ話。
ずるい貴方は，私がずっと欲しくても手に入れられなかった温かい笑顔を，今更こちらに向けるのだ。
「………やさしいのね」
────ずるいのね。
「まあな」
またそうやって，虜にする。
「そんなところも好き」
*
そう，
大好きだったんだ。
貴方が私のことなんて見ていないことは，たぶん私が一番よく知っていた。
そう，たぶん，知っていて。
気付かないフリをしていただけで………
「………もっといっしょにいてよ」
頼って，縋って，抱きついて，
「もっと私を見てよ……!!」
どんな言葉も行動も
私が訴える以上、
シッマの核には触れられない。
隠そうともしない虚偽の塊。
怒りではない。
どうしようもない哀しみにだけ身体がズブズブと侵食される。
「……それでも私は、貴方が好き」
私の言葉は宙を舞い、弾かれ薄れ、散漫していく。
「ほんま、変わり者やな」
いまが、
夢から醒める瞬間。
fin.
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作者名：AKIRA | 作成日時：2019年1月29日 1時
