【無味の飽和砂糖水】gr ページ1
※ケーキバース
人間は、三種類に分けられる。
一つ目は 世の殆どを構成している一般人。
二つ目は "ケーキ"。
三つ目は "フォーク"。
ケーキの人間は、フォークにしか認知されない｢極上の美味しい人間｣である。
血肉から体液に至るまで、フォークが美味しく感じるよう生まれついてしまった存在である。
一方、フォークの人間は殆どが後天的に発症する。
味覚が備わっておらず、ケーキだけを｢美味しい｣と感じてしまい、稀に捕食対象とするケースも存在する。
そのため世間では、｢予備殺人者｣とも揶揄されるため、一般的には秘匿しておくのが吉である。
───かくいう私もその"フォーク"であるのだが。
味を感じられないため、社会では｢味音痴｣というキャラを演じている。
誤魔化すのにもなかなか苦しい場面も点在したが，きっとまだばれていないはずだ。
たぶん……おそらく……
フォークということがバレたら、仕事は愚か、大切な友人すら失ってしまうかもしれないのだ。
どうしてもそれだけは避けて通りたかった。
｢先輩ぃぃ……書類完成しました〜｣
｢ん、どれ。ここ誤字。それとこの資料は確か最新年度のものがあったはずだが……｣
先程たっぷり時間をかけて吟味したはずの資料から次々に訂正箇所が浮彫りになっていく。
自分の無能さを露呈するとともに、げんなりと落胆した。
｢本当にきちんと確認したのか？｣
｢し、しましたよ！……多分！｣
疑わしくまじまじと，こちらを伺う先輩は会社の上司のグルさん。
絵に描いたような有能人間で、どれだけ仕事を積まれても何でもスムーズにこなしてしまう。
おまけに、超のつくほどのイケメン。
ドイツの血が混じっているらしく、美しいブロンドで、目鼻立ちも日本人のそれとは訳が違う。
社内で彼を狙う女性は山のように居るが、皆一様にフラれているようで。
噂では他の会社の美人社長と付き合っているとかなんとか。真偽は確かでないけど。
まあそんな人に指導していただけるだけ、感謝すべきのか……
私のことをたまに小馬鹿にしてくるが、面倒見が良くて尊敬を集め，私を含むみんなから慕われていた。
だが
そんなグルさんは恐らく
いや
ほぼ確実に
"ケーキ"である。
香水などは使っていないと言っていたのに、そばを通るたび香るチョコレート。
汗をかいている日はキャラメル───
他にも様々なケーキを見てきたが、グルさんが今までのケーキの中で、ダントツに美味しそうだった。
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作者名：AKIRA | 作成日時：2019年1月29日 1時
