●Wildest Dreams 2 ページ28
都会のオアシスと呼ばれるこの公園。
日々の喧騒から抜け出し静寂な時間が流れる。
風が通ると木々が揺れる音や虫の音が聞こえてくる。
不思議だ。我に返ったような気持ちになる。
けれどAを探すには広すぎた。
島山先生の銅像の前まで来たけど、ここにもいない。
こんな時間でも時々人とすれ違うけど、若い学生や年齢不詳のおじさんで、彼女ではなかった。
焦りが募る。
もう帰ったのか、それとも・・
探し始めて10分程経って、島山先生が眠る墓へ続く道の階段に座りこむ人物をみつけた。
「A？」
声をかけるが振り向かない。
でも近づくと艶やかな長い髪と華奢で白い脚が見えてきて、Aであるとわかった。
彼女はイヤホンをしていた。
目の前に立って、もう一度名前を呼んだ。
Aは頭を上げ、目を細めて笑顔をみせた。
「探し回ったよ。入口にいないし返事ないし」
「ごめん。酔っ払いと警官？が出てきたから奥まで来ちゃった。
ジュノこそどれだけ待たせるのよ」
「ミヤネ。出て行くタイミングがなかなか無くて。
何の曲聴いてたの」
俺はAの隣に腰をかけて、片耳のイヤホンを自分の耳に差し込んだ。
Musiq SoulchildのLove。
俺もAも好きな曲だった。
けれど彼女が今この曲を聴いていたことに、俺は余計に苦しくなった。
「知ってた？
この曲って誰か人に向けたラブソングじゃないんだよ」
無言で聴き入ってると、まるで俺の考えを見透かしたようにAは話し出した。
「愛そのものについて、擬人化させて語りかけてるんだって。
よくよく歌詞を読むと、確かにって思うの」
俺に向けてそう言った後、彼女に視線は俺の手首に下りた。
そしてさっと他へ視線を移した。
ミサンガがないことに気付いたのだろう。
ほんの一瞬の出来事だったけど、それは明らかだった。
俺たちは再び無言で音楽に聴き入った。
At first you didn't mean that much to me
But now I know you are all I need
The world looks so brand new to me
Now that I found love
Everyday I live for you
And everything that I do, I do it for you
What I say is how I feel so believe it's true
You got to know I'm true
Aが好きだ。
息もできないほど好きだ。
この愛は本物だ。
でも感情だけじゃない。決意だ。
生涯愛するって決めたんだ。
俺はどうしたらいい。
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作者名：クロワッサン | 作成日時：2020年9月12日 21時
