ウリチブ 4 ページ24
「なんで」
私は身動きせずに言った。
まるで分かっていたように落ち着いて。
ジュノも怖気付くことなくじっと見つめ返した。
「お互いが前に進むために。
今がいい区切りだよ」
「区切りって？
私が歌手になるのをやめたから？」
「・・そう。
でも俺の仕事にとっても。
この先Aといるのは限界を感じる」
想像していた悪夢がついに現実となった。
徐々に強くなる動揺を隠そうと、私は太く短く息を吐いた。
「たった一週間前まで正反対なことを言っておいて、
ほんとに急いで決めたんだね」
「いくら待って考えても俺はもう決めたよ」
「でも私にも考えさせてもらう時間はあるよね？」
ジュノは目を伏せた。
そして私によく言い聞かせるようにはっきり言った。
「一緒にいると苦しくなる。
自分が信じられなくなるし、
自分を愛せなくなる」
内側から細かな破片になって割れていくのを感じた。
震えながらも私は声を絞り出した。
「・・どうして、そう思うの？」
彼は暫く視線を外に向けた後私に戻した。
「俺はたぶん、Aのこと一心同体みたいに思ってたんだよ。
もうひとりの自分みたいに感じてた」
そう言ってゆっくりと歩み寄ってきた。
「Aがいなくなったとき、
ものすごくダメージをくらった。
俺たちは2PMになって目標をどんどん叶えてた頃で。
もっと成功したくて毎日必死に仕事したけど、
1人になったらいつも考えた。
どうしても諦められなかった。
俺はAに決めてたんだよ。
初めから。別れた後も。
生涯でこの人にするって。
Aがいないと俺の夢は叶わないと思ってたから、
自分の人生に取り戻すことを考えてきた。
そのことに執念をもってきた」
ジュノは正面に立ちお互いを見つめあった。
彼の顔は更に痩せて目や顎が窪んでいた。
「Aは。
自分がJYPにいるのは、お父さんかジニョンヒョンが理由だって信じてるけど。
本当は違う。
2人は何も知らない。
俺だよ。
全部俺がした。
日本で再会したのは偶然じゃない。
ジウンさんに協力をお願いして計画したこと。
JYPに戻ったのもJYPに残させたのも、
俺が間接的に手を回してきた」
「・・え？」
ジュノが？
"会社が彼女の父親からお金を受け取ってるのよ"
"どうしてここにきてまだ、父親の名前が出るんだよ！！"
私を縛り続けた鎖が解けていく。
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作者名：クロワッサン | 作成日時：2020年9月12日 21時
