● あなたへの祈り 2 ページ7
こんな風に待ち合わせして二人で会うなんて、今まであっただろうか。
おそらく初めて。もう付き合って結構立つのに、これが初めてになる。
その事実に改めて驚いたのと、これから会うことへの期待で胸が高鳴っていた。
Aに言われた通り自転車で来た。テギョンのを勝手に借りた。本人いなかったし。
待ち合わせ場所は会社や宿舎から少し離れた、人通りの少ないところにある公衆電話の前を指定された。もう誰も使っていなさそうな古いやつ。
絶対にここのことだと思うんだけど、彼女はなかなか来ない。
そう不安が募り始めていると、赤い自転車に載ったAが颯爽と現われた。
彼女は嬉しそうに微笑む。でも「おまたせ」とか「待った?」とかそれらしいことは言わない。
「じゃあ行こっか」
そう言って笑顔ですぐに自転車を出発させた。
え、行き先は?とか戸惑う余裕もない。俺もそれについていった。
彼女は場所に迷うことも疲れることも全くなく、慣れたようにすいすいと自転車を漕ぐ。
普段から自転車に乗っているのだろうか。
俺は会社に行く以外はほとんど外に出ない。だからこんな周辺の地域でさえよく知らなかった。
でも、乗ってみると確かに気持ちいい。ペダルを踏むのも楽しい。
後ろから見ると、ひとつ結びにしたAの髪の毛がさらさらと風になびくのがみえる。
彼女のまた新たな一面を知って、胸が熱くなった。
清潭洞から三成洞へ降りていった。想像通り、この辺のオフィス街はゴーストタウン化していた。
人がいないだけで都会はこんなに変わるものなのか。
COEXの横も通っていった。江南を代表する近代的な大型複合施設。ここも普段ならもっと賑わっているはず。
そして彼女がようやく自転車から下りたのは、都会の風景の中にそびえたつ『奉恩寺』の参道前だった。
ここは俺も名前を知っている、歴史ある仏教寺院だ。
「え、ここに来たかったの?」
「うん。だって秋夕でしょ。」
「うちはキリスト教なんだけど。」
「じゃあ入れないの?」
「そんなことはないけど。奉恩寺は韓国の重要伝統的建造物でもあるからね。」
「行ってみようよ。ほら、異なる宗教への研修だと思って。」
なんだそれ。笑
参道を進むと入口の真如門にたどり着いた。
ここに立つだけで畏怖を感じる。Aは「日本よりもすべてがカラフルだ」と言って感心していた。
俺が教えた通りにきちんとおじぎをして手を合わせると、彼女はときめいた表情で門をくぐった。
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なつ?(プロフ) - はじめまして!とても面白くて一気に読んでしまいました^^;続き期待しています! (2019年10月31日 19時) (レス) id: fc66c4ce63 (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - Naishanさん» メッセージいただいていたのに、大変遅くなってすみませんでした。。この先を気になってくださり嬉しいです!本当にありがとうございます (2019年9月17日 22時) (レス) id: f77aa2c100 (このIDを非表示/違反報告)
Naishan(プロフ) - どうなっちゃうんでしょう…すごく先が気になります! (2018年12月31日 20時) (レス) id: d333c1ee1e (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - Naishanさん» コメントありがとうございます!!読んで待って下さる方がいることを知れて、とても嬉しいです(涙)更新がんばりますね!これからもよろしくお願いします:) (2018年11月29日 17時) (レス) id: f77aa2c100 (このIDを非表示/違反報告)
Naishan(プロフ) - 早く続きが見たいです!めちゃくちゃ面白い!ドキドキします。 (2018年11月29日 17時) (レス) id: d333c1ee1e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロワッサン | 作成日時:2018年11月5日 17時