Music and Lyrics 4

不協和音 5 ページ48

ジュノは私の肩からすとん、と手を下ろした。

そして鼻から大きく息を吸い込んだ後、背を向け、考え込むように部屋を歩いた。



「私に努力がまだまだ足りないのも分かってる・・・」


聞こえるか聞こえないかの大きさの声で、私はそう呟いた。



"最善は尽くした"なんて言葉、ジュノは聞きたくなかっただろう。

彼の思い描いていた理想は、この哀れな現実とは、あまりに差が開いていた。

ジュノにも気持ちを整理する時間が必要だ。




　私のせいで。

　私がジュノの計画を狂わせていくせいで。




葛藤するジュノを見て、より深刻に引け目を感じた。




「それで、ハルヌナはなにを言ったんだよ」


ジュノは険しい目つきで振り返った。


「脅されたのか？彼女に。」


「偶然にも立ち聞きしてしまったの。他のスタッフと話しているところを。

ハヨンが来る前、ジュノが何度も私の部屋に来てたことを知っていた。」


「どうやって？」


「はっきりした証拠はもっていないみたい。でも彼女は確信していた。」


「ただの噂好きなら放っておくけど、そうじゃないんだろ？」




私は言葉を続けられなかった。

その沈黙が、別の意味を持たせるのだと分かっていても。




「しっかりしろ、A！

ほかに何を彼女は言ったんだ？」



ジュノはあからさまに苛立っていた。
白状させるかのように、私に詰め寄った。




「真実を知ったの、私に関する。」



後ずさりし、声が震えながらも、私ははっきりと告げた。


もう腹をくくっていた。

どんな真実にも、目を背けないと。
信じたくない裏切りがあったとしても。



「誰かが買収されている。私の父に。

娘の私をデビューさせる約束で。」



「それがハルの言い分か？」


「ジュノは知ってた？」


「そんなの嘘だ。妄想だよ。」


「ううん、これでつじつまが合う。

みんな、私も含め、違和感を感じていた。
白紙の状態から、割り込むように急に決まったデビュー。
そもそも、やむを得ない理由があって退社した練習生を、簡単に会社に戻している。」


「戻すことだってある。君にはその実力があるんだよ！

どうしていつもそのことに目を背ける」


「分かるの。父ならそういうことができるって。
私も裏切られてきた。彼は手段を選ばないの。」


「待て、早とちりするな。
そんなことは起きていない！
会社のことは俺たちがすべて把握している」


「ちゃんと知りたい！

父が何をしたのか、私がここにいていいのか」

不協和音 6→←不協和音 4

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す