不協和音 1 ページ44
ぐらっと揺れた拍子で目覚めた。
最初にわかったのは、辺りのまぶしさとサイレンの音。
自分は仰向けになっていて、体はマットレスか何かにへばりついていた。
「A!いまのブレーキで目覚めたみたい!」
「ここは救急車の中です。もうすぐですからね。」
二、三人が私の顔を覗き込んでいるのがおぼろげにわかった。
その一人はハルだとやがてわかる。
ああ、わたしまだ生きてるんだ。
救急車ってことは。
まだあれからそんなに時間が経っていない。
船酔いのような眩暈はあるものの、心臓の痛みはもう消えていた。
病院に着いた頃には、周囲の状況もさらにはっきりしてきていた。
私は救急外来のベッドに運ばれ、複数の人から同時に血圧や心電図、採血もされた。
けれども、まもなくその人たちはどこかに消えて医師一人だけになり、私は彼のいくつかの質問にしっかりと受け答えした。
CTの撮影も済ませた後、私は再び医師の診察を受けた。
「脳の画像も心電図も異常ないです。不整脈もありません。今のところ心配する必要はないと思います。
ただ、血液検査の結果から脱水と栄養不良がみられましたので、1本栄養剤と水分を点滴をしておきましょう。それが終わったら、家に帰ってお休みいただいて構いませんよ。」
医師は立ち上がった。
言葉が出ない私に対して、同席したハルが咄嗟に動いた。
「でも先生!本当に大丈夫なんでしょうか?
さっきはとてもじゃないけど・・」
ハルは顔をこわばらせていた。
私の体に起きた一連の症状を目の当たりにした彼女には、とても信じられないようだ。
その医師は、意味ありげに私の目を数秒見つめた後、穏やかに言った。
「相当お疲れだったのでしょう。しばらくは安静にして、しっかり休みをとって下さい。」
それ以上聞けることはなかった。私たちは礼を言って退室した。
「ハヨン?」
「オンニ!」
診察室を出ると、ハヨンがベンチに座って待っていた。
ハヨンは上から下まで私を見た後、ハルに向けて言った。
「マネ長には連絡しておきました。Aさんはもうそのまま帰していいそうです。
ハルさんは会社にすぐ戻るよう、伝言を頼まれました。」
「本当にありがとう。その場に居合わせただけだったのに。」
「いいえ。このまま私はAさんを乗せて一緒に帰りますので。ハルさんは他のスタッフと。」
ハルは何も言わず、不安げな目で私を見た。
私は思わずうつむいた。
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なつ?(プロフ) - はじめまして!とても面白くて一気に読んでしまいました^^;続き期待しています! (2019年10月31日 19時) (レス) id: fc66c4ce63 (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - Naishanさん» メッセージいただいていたのに、大変遅くなってすみませんでした。。この先を気になってくださり嬉しいです!本当にありがとうございます (2019年9月17日 22時) (レス) id: f77aa2c100 (このIDを非表示/違反報告)
Naishan(プロフ) - どうなっちゃうんでしょう…すごく先が気になります! (2018年12月31日 20時) (レス) id: d333c1ee1e (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - Naishanさん» コメントありがとうございます!!読んで待って下さる方がいることを知れて、とても嬉しいです(涙)更新がんばりますね!これからもよろしくお願いします:) (2018年11月29日 17時) (レス) id: f77aa2c100 (このIDを非表示/違反報告)
Naishan(プロフ) - 早く続きが見たいです!めちゃくちゃ面白い!ドキドキします。 (2018年11月29日 17時) (レス) id: d333c1ee1e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロワッサン | 作成日時:2018年11月5日 17時