Crash 5 ページ34
「やめないといけないのに、やめられない。」
私の狭いベッドで、ジュノは天井を見ながら言った。
本気なのか。
私を繰り返し抱いておいて、言う言葉じゃない。
私が苛立って起き上がろうとすると、ジュノは私の腕を引っ張って体に覆いかぶさった。
目を光らせ、真剣な表情で。
そしてその大きな手のひらで、私の唇、頬、首筋をなぞった。
「どうしたらいい?ここを出たら、またすぐに会いたくなるんだ。馬鹿みたいに。」
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電話口で震えたジュノの声を聞いたとき、私はそのことを思い出した。
あのときのジュノ。決して私を誘惑してたわけじゃない。
本気で怯えていたんだ。二人で堕ちていくのを。
けどそんな心配をよそにジュノは飛躍した。
今年、スポットライトはジュノに浴びられた。
私にもデビューの話が舞い込んだ。あの話を聞くまでは。
事の深刻さを理解したジュノは、私に同意した。
楽屋には行かない。
でもコンサートは観に行くよ。ちゃんと見届けたい、と控えめに言った。
私もそれに異論はなかった。
私は既にステージモードのスイッチに切り替えていた。
むやみに悲しくなる気がして、今までスマホを見ないようにしていた。
でももう我慢できない。
通知を消していたカカオ。
ジュノから8件もきていた。
"もうすぐだな。緊張しなくていいよ。いつも通りやればいい。"
"まわりに迷惑かけることを恐れなくていい。俺もいっぱいあった。ステージを楽しめ。"
"Aらしくやればいい。なんと言われようと君の歌声が一番だ。"
"皆に会った?俺も会いたかった。"
"会場に入った。見守ってるからね。見つけたらウィンクしてよ。ククク。冗談です。"
"ねえ、スマホ一切見てないの?"
"A愛してるよ。また会おうね。俺は君を諦めるつもりはまったくないから。今日のことお祝いしよう。"
"A愛してる。"
私は大きく息を吸ってスマホを閉じた。
そして涙を堪えようと、天井を仰いだ。
そのせいで顔が火照ってあつくなる。
なんで来ないでって言ってしまったんだろう。
ジュノに会いたい。いま一番に会いたい。
会って息が止まるほど強く抱きしめてもらいたかった。
それだけで、私は強くなれるのに。
「Aさん、ジニョンさんが呼んでます!円陣組むよと!」
背部から呼ばれた。
聞いた声だ。あの夜。
誰か分からなかったもうひとり。
でも振り向くと彼女はもうそこにいなかった。
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なつ?(プロフ) - はじめまして!とても面白くて一気に読んでしまいました^^;続き期待しています! (2019年10月31日 19時) (レス) id: fc66c4ce63 (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - Naishanさん» メッセージいただいていたのに、大変遅くなってすみませんでした。。この先を気になってくださり嬉しいです!本当にありがとうございます (2019年9月17日 22時) (レス) id: f77aa2c100 (このIDを非表示/違反報告)
Naishan(プロフ) - どうなっちゃうんでしょう…すごく先が気になります! (2018年12月31日 20時) (レス) id: d333c1ee1e (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - Naishanさん» コメントありがとうございます!!読んで待って下さる方がいることを知れて、とても嬉しいです(涙)更新がんばりますね!これからもよろしくお願いします:) (2018年11月29日 17時) (レス) id: f77aa2c100 (このIDを非表示/違反報告)
Naishan(プロフ) - 早く続きが見たいです!めちゃくちゃ面白い!ドキドキします。 (2018年11月29日 17時) (レス) id: d333c1ee1e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロワッサン | 作成日時:2018年11月5日 17時