Crash 4 ページ33
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ジウンさんは変わらない爽やかな笑顔を私に向けた。
「A、いよいよ今日ね。ずっと楽しみにしてたわ。
どう?緊張してる?みんな初ステージはそんなものだから、緊張しても大丈夫なのよ。」
「ありがとうございます。」
相変わらず、彼女は勢いよく畳みかけるように話す。
ジウンはあの晩、私が机の下に隠れていたことに気づいたのだろうか。
手帳の違和感に気づいただろうか。
日本デビューの頃の2PMとジウンさんが写っていた写真。
私が取り出したそれとは別のもう1枚の写真。
そこには、2010年よりもさらにあどけないジウンさんが、病院のベッドの上で家族と写っていたものだった。
私は彼女から聞いたことがあった。接待の後の、東京のバーで。
数年前病気で母親を亡くし、その悲しみを乗り越えるのが大変だったと。
私のような部外者に、彼女は心の内を話してくれた。
それなのに私は写真を見たその瞬間まで、そのことをすっかり記憶から消し去っていた。
代わりに、嫉妬心をずっと高め続けていた。
ジュノと一緒に仕事をし、彼から絶対的な信頼を寄せられる彼女に。
疑いの目さえかけていた。
でも結果的に私のその一人よがりな心が、あの惨い現場へおびき寄せた。
そしてジウンさんに救われたのだ。
「ジウンさん・・」
「なに?」
ジウンさんは私の言葉の続きを待った。
心配そうにピュアな目で。すべてを知っているかのように。
すべてを告白してしまいたかった。
彼女に謝って、解放されたかった。
でも言えるわけない。こんな意味不明な話をいま。
「大丈夫。練習通りにやればいいのよ。あなたならできる。」
ジウンさんは固まってしまった私を解くように、肩を軽く抱いた。
そしてにっこり頷くと楽屋を出た。
彼女が最後の訪問客だった。
ジュノには。
今日は楽屋に来ないでと昨日伝えていた。
ハルオンニにバレてる。そして探られている。
私もまだ動転しているし、みんながいる場では直接会えない。
その事実を取り急ぎ話した。
電話口でジュノも動揺していた。
ハルが指摘したあの2か月間。
あの時期は、私たちもどうかしてたと思うほど歯止めがきかなかった。
ジュノはソロ活動の準備をしていて、ジュノシデピークの夜明け前。
一方の私は、鳴かず飛ばずで底辺をうろうろ。
まったく接点のないようにみえた二人は、会えば互いを激しく求めた。
二人でいるときだけは、お互い本能のまま剥き出しになれた。
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なつ?(プロフ) - はじめまして!とても面白くて一気に読んでしまいました^^;続き期待しています! (2019年10月31日 19時) (レス) id: fc66c4ce63 (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - Naishanさん» メッセージいただいていたのに、大変遅くなってすみませんでした。。この先を気になってくださり嬉しいです!本当にありがとうございます (2019年9月17日 22時) (レス) id: f77aa2c100 (このIDを非表示/違反報告)
Naishan(プロフ) - どうなっちゃうんでしょう…すごく先が気になります! (2018年12月31日 20時) (レス) id: d333c1ee1e (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - Naishanさん» コメントありがとうございます!!読んで待って下さる方がいることを知れて、とても嬉しいです(涙)更新がんばりますね!これからもよろしくお願いします:) (2018年11月29日 17時) (レス) id: f77aa2c100 (このIDを非表示/違反報告)
Naishan(プロフ) - 早く続きが見たいです!めちゃくちゃ面白い!ドキドキします。 (2018年11月29日 17時) (レス) id: d333c1ee1e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロワッサン | 作成日時:2018年11月5日 17時