蝶々夫人 5 ページ18
一歩足を踏み入れるとそこは別世界。
2000席を超える真紅のシートが縦にも横にも広がり、そこにゴールドの柱や天井が調和して、まるでヨーロッパのような豪華でクラシックなオペラハウスの雰囲気を演出していた。
私たちは入口で足を止める。
正面2階席の最前列と2列目に、会社関係者が固まっているのが後ろからも見てとれた。
分かるだけでも、テギョンやマネジメントチームのジュソプさん、ミンホさん、プロデューサーのトミーさんらがいる。
もちろんジュノもいた。後頭部の形ですぐわかる。
誰とも話さず、平然と前を向いて座っていた。
ちょうど今、中央の席に着く人がいる。
ジョン・ウク代表だ。
なぜここに社長が・・?
明らかに、何かの目的で集められた面々。
これまでの胸騒ぎは、はっきりとした失望に変わっていた。
こういうことです・・と言いたげにチャンソンが私に目を向ける。
「私はハメられたってことね。」淡々と言った。
「・・みんなはそんな風に思ってない。Aは普通に来たと思ってる。
ジュノがどうしても君をここに呼びたかったんだ。」
「とりあえず座ろう」とチャンソンは私に気遣うように優しく言う。
一緒に通路を進み、列に入っていた。
同じ後列のイェウンとヘリムが気づき、「Aヤ〜」と手を振る。
私の名前が聞こえてきて、右斜め前に座るジュノもさっと振り返る。
横にいる女性も後から振り向いた。
「あらA。」ジウンさんがにっこりと微笑む。
どうして、ここに彼女が一緒に。
ジュノは一瞬鋭くみただけで、何事もなかったかように正面に向き直した。
私は彼女に挨拶を返すものの、目は泳いでしまった。
私はチャンソンと見知らぬJYP社員に挟まれて座った。
紹介を受けるが、頭に入ってこない。
私にはもうわからない。
この状況を作ったジュノの魂胆がわからない。
幕が上がる。
プッチーニ作曲の『Madama Butterfly/蝶々夫人』。
日本を舞台にしたオペラで、世界でも上演回数の多い演目だ。
19世紀末の長崎。
芸者として暮らす日本人の少女、蝶々は、駐在中のアメリカ人海軍士官のピンカートンと結婚する。
蝶々は周囲の反対を押し切り、キリスト教に改宗までして愛し合うが、ピンカートンは日本での任務が終わるとアメリカへ帰国してしまう。
彼は蝶々夫人に必ず戻ってくると約束する。
蝶々夫人はその言葉を信じて、アリア『Un bel dì vedremo/ある晴れた日に』を歌うのだ。
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なつ?(プロフ) - はじめまして!とても面白くて一気に読んでしまいました^^;続き期待しています! (2019年10月31日 19時) (レス) id: fc66c4ce63 (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - Naishanさん» メッセージいただいていたのに、大変遅くなってすみませんでした。。この先を気になってくださり嬉しいです!本当にありがとうございます (2019年9月17日 22時) (レス) id: f77aa2c100 (このIDを非表示/違反報告)
Naishan(プロフ) - どうなっちゃうんでしょう…すごく先が気になります! (2018年12月31日 20時) (レス) id: d333c1ee1e (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - Naishanさん» コメントありがとうございます!!読んで待って下さる方がいることを知れて、とても嬉しいです(涙)更新がんばりますね!これからもよろしくお願いします:) (2018年11月29日 17時) (レス) id: f77aa2c100 (このIDを非表示/違反報告)
Naishan(プロフ) - 早く続きが見たいです!めちゃくちゃ面白い!ドキドキします。 (2018年11月29日 17時) (レス) id: d333c1ee1e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロワッサン | 作成日時:2018年11月5日 17時