Music and Lyrics 4

● あなたへの祈り 8 ページ13

JYPという会社は日ごとに大きくなっていていて、"タレントの教育育成"という名のもと、新たに2つのレッスンがカリキュラムに追加されていた。

それは『日本語』と『性教育』。

日本語はともかく、性教育って？！！という反応が当然僕らから出る。
そして何の詳細もなく土曜の夜にこうやって男子練習生が一斉に集められているのだ。

ちなみに女子は来週。俺たちが先兵ってわけだ。




このとてつもなくぎこちない空気の中、いよいよ講師が教室に現われて教室の動揺はさらに深まった。



あのク・ソンエさんだ。

韓国人ならバラエティーやCMで誰もがみた顔。儒教社会の韓国で性教育の旋風を巻き起こしたスター講師。
じゃあこれからやるのは、あの人の言う『隠さないで堂々と性について話そう』の実践？


これはやばいぞ。
一斉に固まった男子たちに対して、彼女は優しく微笑んで話しかけた。


「この時間は講義じゃないから、気負いせず気軽に聞いて参加してね」


テレビではもっと気の強そうなおばさんだったけど、かなり物腰柔らかい。みんなに気を遣ってくれているのがわかる。
同時に教室の随所から力が抜ける音がした。


「それにしても皆さすが芸能人ね。どこをとってもハンサム。主人も若いときはねー。笑
私たちはね、大恋愛だったの。波瀾万丈の。そうだ、その話を今からちょっとしてもいい？」


いきなりの脱線！でも目の前の超有名人のプライベート話に、全員食いつかないはずがなかった。




性というよりは、本当に恋愛の話だった。

今よりももっと保守的だった社会。
若さゆえの情熱。そして過ち。
恋愛とその後の人生の結びつき。


身の上話をしているようで、これらはしっかりとある結論につながっていた。


「急いだり焦る必要はないの。
自分の将来も恋愛も、自分で選べるのよ。
大切なのはいつも考えること。行動する前にいつも一度考えることよ。」



部屋が再び、なぜかしーんとする。


その静けさが俺を焦らせた。
他の練習生はどうなのか、気になって仕方なかった。




どうしてそんなに過剰反応したんだと他の人は責めるだろう。

でも当時俺はまだ10代で、あまりにも真っすぐでなんでも吸収した。




聞いてるふりをして袖を指先まで伸ばした。
そして袖の中でAからもらったミサンガを外し、ポケットにしまったのだ。





ミサンガを次に思い出したのは、もう洗濯も済んだ頃。



ポケットをすぐに確認したけど、もうそこにはミサンガはなかった。

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