・ LIFE 70 ページ25
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『っ、』
耕の胸をドンドンと叩き唇を離すと私達の間を銀の糸が繋いで、その糸を耕がペロリと舐めとる。
耕「……なんでキスした」
泣いたせいで赤くなっている目を私に向けて切なそうに問いかけてくる。私はその問いかけに対して
『なんで受け入れたの』
答えられなかったから。なんでと言われて、あなたが他の人に触れるのが嫌だから。だなんて言えなくて口付けをした。とは言えなかった。
耕「質問を質問で返すな。」
どうしよう、と頭がシャウトしそうになった時、耕の手が私の頬に触れた。
耕「久しぶりだった。お前の唇も、キスの仕方も変わっていなかった。」
『……もう、あの時とは違うんだよ。あの頃の私達は未熟過ぎて、臆病で、まだ早かったんだよ。』
“あの頃”とは高校3年生の時の真冬の夜のこと。狭いベッドで生まれたままの姿でお互いを温めるかのように抱き合い求めあった。
お互いの“ハジメテ”を捧げあった。あの日は無我夢中だった。でも、幸せだった。
意味もなく涙が零れて、幸せという事を肌で感じ、脳天まで響くようなお互いだけの甘い声が部屋中にまどろみ、何回も何回も頭が真っ白になった。
“愛してる”という言葉を何度も囁きその度に照れくさそうに微笑み、何回もお互いがお互いだけを考え、お互いので達した。
『もう、あの頃には、戻れないんだよ』
あの純粋で“キレイ”だったあの頃には戻れないんだ。きっと、“キタナイ”私を知ってしまったら目の前にいる彼は私をあの頃のように愛してはくれないだろう。
恋人では無かった。興味本位でもなかった。関係などどうだってよかった。
ただ、“愛していた”だけだったんだ。
耕が出ていったドアを見つめながら涙をこぼした。両目から伝う届かず、誰にも拭われることのない涙がシーツの上に落ちて水たまりを作る。
『……耕、耕、好き、ッ、ウッ、ヒック…………耕、愛してる……ッ、』
口元を両手で抑えて声がもれないように必死に抑える。
想いと一緒に、流れてしまえ───
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みはる(プロフ) - この世界観、なんだか好きです。だいぶ楽しませていただいているんですけど、ちょっと違和感をかんじた感じた部分があって。なんだろうと思ったのです、、、トロントのやつですね! トロントはアメリカじゃなくてカナダの都市です!! (2018年6月10日 2時) (レス) id: d6478e436f (このIDを非表示/違反報告)
彩 - 橘先生が好きなので、絡みを増やしてください。 (2017年10月1日 9時) (レス) id: ed5c94d402 (このIDを非表示/違反報告)
作楽(プロフ) - ところどころ、優輔くんが三井先生の名前になっていたり、三井先生が緋山先生の名前になっていたりしています。続編からも楽しみにしております。 (2017年9月30日 22時) (レス) id: 2a04f50b79 (このIDを非表示/違反報告)
真奈美 - 更新お疲れ様です!いつも読むとすぐ終わっちゃって続きが気になるくらい、面白いです。大変だと思いますが、更新頑張って下さい! (2017年9月30日 17時) (レス) id: 5749d332a2 (このIDを非表示/違反報告)
真奈美 - 続きがいつも気になります!更新頑張って下さいね!応援しております。 (2017年9月29日 22時) (レス) id: 5749d332a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ラベン | 作成日時:2017年9月18日 11時