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すると徐に高橋くんが口を開く。
｢なぁー…せんせーってさぁ、好きなタイプとかあるん？｣
『え！？』
急な質問に思わず動揺する。
『どうしたの？急に』
｢別に…！せんせーのこと知りたいな〜と思って｣
そう言って机に顔伏せ、私の顔を覗き込むように見上げてくる高橋くん。少し微笑む姿にまたドキッとしてしまう。
『う〜ん、ちゃんと物事に向き合える人、かな？』
｢向き合う？｣
『うん、一度決めた事を最後まで真剣に向き合う事ってすごくかっこいい事だなって思って。』
｢へ〜、なるほどなぁ…｣
少し含んだように言う高橋くんはその後もきっちり集中して私の指導を受けてくれた。
それからというもの、高橋くんは以前にも増して集中して勉強をするようになり、みるみる成績も伸びて行った。
どうやら私の指導時間以外にも自主勉強もしっかりしているのだと、親御さんからもお話を聞いた。
『高橋くん、最近ほんとにすごいね。このままいけば志望校へのA判定も夢じゃないよ！』
｢ほんまに！っしゃ！俺ぜったいせんせーと同じ大学合格したいんよ！｣
『ふふ、そしたら高橋くんが後輩になるんだもんね。なんか変な感じだな〜。うちの大学、女の子多いからモテモテになりそうだね、高橋くん。』
そう言うと、高橋くんは少し顔を曇らせて黙ってしまった。良かれと思って言ったことだったが、どうやら彼を怒らせてしまったのかもしれない。
『どうしたの、高橋くん…』
｢…俺、別にモテたくて大学行きたい訳ちゃうし…｣
『…あ、そうだよね。高橋くん、真剣に大学に行きたいのに、ごめんね？』
確かに、こんなに頑張っているのに不純な動機だと捉えられたら腹も立つだろう。少し反省していると急に頭に布団の感触、そして視界が高橋くんでいっぱいになる。
高橋くんにベッドに押し倒されているという状況に頭が追いついておらず、混乱しながら高橋くんを見つめることしかできない。
『た、高橋くん…？』
｢俺、せんせーの事しか見てへんのに…っ｣
『え？』
｢なぁ、俺がんばるから、ちゃんと男として見て？｣
高橋くんの今までに無い真剣な表情に、ドクンと胸打つ鼓動は、もう誤魔化しきれない。こくんと頷くと、蕩けるような笑顔で"やった"と呟く高橋くん。
｢俺が合格したら、ちゃんと言うからそれまで待っとって？｣
なんて既に心は高橋くんに奪われているのだが、そう伝えるのは、彼が無事合格した頃の少し先のお話。
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作者名：シキ | 作成日時：2023年6月22日 15時
