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｢ふふ、びっくりしたわ〜。俺は正門良規って言います。お嬢さんは？｣
『まさ、かど…さん。AAです。』
｢Aちゃんか、可愛らしい名前やな。でもお礼なんてええよ？困ってる人を助けるのは当たり前やから。｣
『い、いえ！そんな訳には…私の気が収まらないというか』
そう言うと正門さんは"ん〜"と考えた後に
｢やったら、お嬢さんのオススメの居酒屋さん教えて欲しいわ。なんなら一緒にいこ？｣
また優しい顔で笑う正門さんに、思わずドキッとする。
『…ぜひ！』
こうして流れるように連絡先を交換して、嬉しくて心が暖かくなる。なぜだか分からないが、正門さんと居ると恐怖心を忘れ、安心している自分がいた。
｢じゃあタクシー呼ぶな？｣
と言って正門さんはタクシーを止めるために駅を出て道路沿いに行ってしまった。ひとりぽつんと残された駅でまた、ジワジワと恐怖心が募る。
あの人が捕まっているとわかっていても、他のスーツの男性が通る度にぞわりと鳥肌が立つ。
震え出した体を抑えるように自分の両腕を抱きしめ、ベンチに座り込むものの、全然止まらない。
するといつの間にか正門さんが戻ってきており、慌てた足音で駆けつけられる。
｢Aちゃん！？大丈夫か？｣
『…あ、大丈夫です。ちょっと時間が経てば…収まると思うので。』
｢ごめんな、1人にさせてしまって。そらあんな事があった手前心細いよな…俺の配慮不足やったわ｣
『そんなことっ…！！私が、弱い心なだけで…、っ！？』
ここまでしてくれている正門さんに謝らせてしまった事が申し訳なくて、勢いよく立ち上がり否定すると、急に立ち上がった事でバランスをくずしてしまった。
｢！！おっ…と！｣
すると正門さんの胸に飛び込む形になり、それを支えてくれようとした正門さんに抱きしめられる。
ふわっと香る男らしい香水の匂いが広がり、ぶわっと顔が赤くなる。
｢急に立ち止まったら危ないで？気をつけてな…って、あ！｣
ぱっと私から手を離して距離をとる正門さん。なんだか寂しい気がするのは何故だろう。
｢ごめん！！あんな事があった後やのに、男が触れたら怖いし嫌よな！？｣
と言って焦っているのだが、なぜだか私はむしろ寂しいと思ってしまう。
『い、いえ…正門さんには…嫌、じゃ無かったです…。』
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作者名：シキ | 作成日時：2023年6月22日 15時
