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こんなのズルいじゃないか。
勇気をだして立ち上がり、さっきよりもっと縮まった距離で先輩を見つめる。
『私、ずっと、先輩に生徒手帳を拾ってもらったあの日から、西畑先輩が好きです。』
「ん、ありがとう。俺もずっと、Aちゃんが好きでした。」
甘い顔をもっと甘く煮詰めたような笑顔で笑う西畑先輩。
何度、こんな日が来ることを想像しただろうか。
またしても私の涙腺は決壊してしまう。
「ほら、また泣いてから。」
『っ、夢、かと…思って』
「夢やないよ。そもそも俺の方がずっと前から見てたんやから。」
『え、』
「あんたのことずっと見てなかったら、生徒手帳を落とす瞬間なんて見れるわけないやろ？」
そう言ってふわりと私を抱きしめてくれた先輩。ほのかに香る柑橘系の香りが鼻を擽る。
常套句ではない、先輩の声が聞けたのだった。
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作者名：シキ | 作成日時：2023年6月22日 15時
