I’m in love with you. (ページ14)

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溺れる【西村】ページ14

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※喫煙表現アリ
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西村視点

大学生になったタイミングで、憧れの一人暮らしを始めてはや一年、
だいぶ生活にも慣れてきた頃だ。

夕暮れ時に、ベランダに出ると少し甘い煙草匂いが香ってくる。

匂いの方に顔を向けると、あちらもゆっくりと俺の方に顔が向く。

『こんばんは、拓哉くん。』

「Aさん、こんばんは。」

ふわりと微笑むこの人は、俺のお隣に住むAさん。
綺麗で優しくて、歳上のこの人に俺はすっかり心を奪われてしまっている。

引っ越してすぐ挨拶に言った時に一目惚れして、そこから煙草を吸うAさんがベランダに出る時に、何度か一緒になって、そこから話すようになった。

今日も形の良い唇に加えられている煙草から目が離せない。

「…それ、ってそんなに美味しいんですか？」

『え？…あ〜…美味しく、はないかな？』

そう言って、彼女はスラッとした細い指で灰を落とす。

『でも、もう私の一部になってるから、辞められないんだよね…』

ふわっと彼女の口から煙が出る、夕陽に照らされた横顔は、まるで絵画のように美しかった。
その煙の甘い香りにまた、俺は酔いそうになる。

Aさんをそんなに夢中にさせているなんて、なんて羨ましい。
物に嫉妬するなんて女々しいにも程があるが、思わずじっと妬みの籠った視線を彼女の口に収まる煙草に送ってしまう。

すると、無意識のうちに「ええなぁ…」と声が漏れていたようで

『吸ってみる？』

と、先程までAさんが咥えていた煙草を差し出される。

正直、喫煙には微塵も興味はないのだが、彼女が吸っていたというだけで、俺が手を伸ばすには充分な理由だった。

Aさんから煙草を受け取り、異常な心拍数の中、口を付ける。

思いっきり吸い込んだは言いものの、初めて喫煙した俺が受け入れられる訳もなく

「…っ！！がはっ、げほっ」

と盛大に噎せた。甘い香りとは裏腹に口に広がる苦味に顔を歪める。

『あはは、まだ拓哉くんには早かったか〜』

無邪気に笑うAさんにまた胸が高鳴る。