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個別レッスン ページ10

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とりあえず蓮くんの前で今できる限りの力でテーマ曲のパフォーマンスをすることに。


とりあえず今できることはした…はず。


ドキドキしながら蓮くんのアドバイスを待っていると、思いがけない言葉が返ってきた。




川尻「んー…Aさ、歌詞はちゃんと見た?」

『へ、』



歌詞はいちばん最初に覚えたし、なんならミスもしてへんはず…



川尻「歌詞の内容、ちゃんと自分の中に落とし込んだ?」

『…あ』



そういえば最近はどうパフォーマンスするかに夢中で、ちゃんと歌詞の意味を深読みしていなかった。昔は1番にしていたのに



川尻「も〜、Aがいちばん大切にしとったことでしょ?俺もAのお陰でちゃんと歌詞の深読みするようになったのに。」

『なんか、必死すぎて…1番大事なん忘れてたわ…』

川尻「うん、じゃあちょっと考えよう。改めて!」



こうして今一度、座り込んで歌詞カードを改めて見る。
初めてこのテーマ曲を聞いた時は、音域とか振り付けとかに気を取られて、ちゃんと歌詞を聞いていなかった事を思い知らされる。


なんて、こんなに俺たちに寄り添ってくれた歌詞に気づかなかったんだろう。
歌詞を読むだけでボロボロと涙がこぼれ落ちる。


そんな俺に蓮くんは優しく頭を撫でてくれた。


どこかで、絶対にデビューすると意気込んでダンスへの意地から強気で望む自分を作ってパフォーマンスをしていた。

だけど歌詞をきいて、久しぶりに思い出した。夢を、初めて持った時のことを。アーティストに憧れて、自分も人を救う側になりたいと思った日のことを。



川尻「Aにとって、素直な感情を見せるのは恥ずかしいことかもしれんけど、俺は今のAの全部さらけだしとる表情のほうが綺麗やし素敵やと思うよ。」

『っ、蓮くん…俺、どこかで忘れてたんかも…純粋にアーティストになりたい気持ち、憧れてる気持ち…楽しむ気持ち…』

川尻「わかるよ、この環境におると一気に自分の殻を作っちゃうけんね。でも、今の感情だけは忘れたらダメよ?」

『うんっ…ありがとう、蓮くん…』



そう言うと蓮くんは蕩けるような優しい表情で、俺の頬に伝う涙を指で拭ってくれた。

それからお互いのクラスへ戻り、ラストの追い込みにかかった。

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作者名:シキ | 作成日時:2024年1月6日 18時

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