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日光が暖かくなって来ている春。
私は日傘を差しながら、約束通りの時刻と場所で加州さんを待っていた。
彼が一体どんな格好で来るかは分からないが、絶対に帽子マスクメガネはしているだろうと予測している。私もなんとなくマスクをしている。服は黒のハイウェスト、上は適当に選んだ白の服。後は白のジャケットを羽織っている。
まさか加州清光と歩くなんて誰が予想できるだろう。メイクをしたことがない私はやらなかったことに後悔し始めていた。
手持ち無沙汰になってスマホを弄っていると、後ろからトントンと肩を叩かれた。
「ごめんね、待たせちゃって。行こっか」
「大丈夫です」
やはり思った通りの変装をしていた加州さんが眉を下げながら立っていた。しかし近づくと芸能人オーラというものを感じる。
さっきまでスマホでカフェのメニューを見ていたので、何を食べるか歩きながら考える。
すると、加州さんが私の服の袖を少し掴んで近づいてきた。
「ねぇ、甘いもの好き?」
「はい。結構…いや凄く大好きです」
「ん、俺も大好き。Aは多分……」
少しも考えるような仕草を見せずに、彼は私の好きな甘いものを当てた。合っていると答えると加州さんは目だけで嬉しそうな感情を見せる。
その赤い瞳に吸い込まれそうな幻覚がする。
「貴方は、何が好きなんですか?」
なるべく人前では加州さんの名前を呼ばないようにしよう。
「俺?俺は…和菓子とか好きかな」
「…あ、なんか、和服似合いそう……ですね」
彼の和服姿を想像した時、脳裏に一瞬赤色の着物が過ぎった。しかし実際に見覚えはない。テレビか何かで見たことがあるだけかもしれない。
あまり深くは考えずに足を進める。
「じゃあ今度一緒に着物でも着る?アンタも似合いそうだよ」
「そ、そうですか…?」
七五三ぐらいの時しか着たことがないが、果たして似合うのだろうか。
それにしても、加州さんはまた私と会うつもりなのだろうか。彼の中にまた今度、という言葉があることが奇跡な気がする。
「良いもの買って、お化粧して、髪も飾ったら……凄い綺麗で可愛くなりそー…」
うっとりした目でそう話す加州さん。この人は着物を買うつもりなの?
少し呆然としている私の手を取り、彼は色っぽい指使いで私の指をなぞる。なんだかくすぐったい。
「爪も…紅に染めたい」
あまりに真剣な口調なので、どこまでが冗談なのか分からなくなってきた。
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晴(プロフ) - 現パロめちゃくちゃ好きです…!完結まで是非応援してます!! (2022年5月2日 23時) (レス) @page3 id: f9289dccaf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:目ん玉焼き | 作成日時:2022年4月27日 22時