二十二 ページ23
下弦の鬼が出てきます。
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『待ってッ、!』
その言葉は虚しく響いた。
・
私がこんなに声を荒らげるのは久々だった。
なぜ叫んだか、それは無惨さんのせいだ。
今日、彼は機嫌があまり良くない。
朝からピリついた雰囲気を纏わせ、私を腕の中にしまい離さない。
誰も寄せつけない空気のせいで、私もそこを離れることは叶わなかった。
「下弦の鬼を集めろ」
そう言い放つと、鳴女さんが琵琶を鳴らす。
「着替えろ。お前にも来てもらう。」
『分かりました』
急ぎで着物に着替え、無惨さんの元に向かうと、有無を言わず飛ばされる。
「頭を垂れて蹲え、平伏せよ。」
目の前には6鬼の頭。
これが、下弦の鬼…。
誰もがみな震え、恐怖と焦りの匂いは最悪だった。
「貴様らは私に心から使える気はあるのか。何故こんなにも弱い。」
「私はッ、貴方様こそが全てです!必ずや成し遂げるものとし、、」
一瞬だった。
私の足元に転がる彼女の頭。
声すら出なかった。
「貴様は下弦の中でも口先ばかりの奴だったな。お前程度、他の鬼で穴埋めできる。」
「ぁ、、あ…、」
涙を流す彼女に手を伸ばすと、その手を横から止められる。
「触るな。汚れる。」
『…構いません。』
「お前が他の鬼の血で汚れることは、私が許さない。」
『では、後から無惨さんが綺麗にしてください。この身は貴方のもの。お好きにどうぞ。』
そう言い、彼女の頭を抱きしめた。
涙は止まらず、もう消えかかっていた。
「…、ごめ、んね……おねぇちゃん、…が、守って……あげる、から…」
『偉かったね…。あっちでは幸せになるんだよ…。』
完全に消えた手元を見つめた。
いつの間にか下弦の鬼はいなくなっており、膝を着く私の真横に、無惨さんが立っていた。
「鬼にかける慈悲などいらぬ。」
『それは、』
それは、貴方にも慈悲がかけられぬということですか。
喉で突っかかった言葉を飲み込んだ。
これを私の口から彼に言うのは、酷だ。
彼は人も鬼も直ぐに殺してしまうけれど、感情がない訳では無い。
彼の感情のあり所に私が居なくては、誰が変わりになるのだろうか。
それでいらぬ犠牲が増えるのではないだろうか。
だったら、私ひとりで十分だ。
「鳴女、私の部屋までAも共に飛ばせ。他の鬼を部屋に寄せるな。」
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入間(プロフ) - たくあんさん» 非常早いコメントで笑 ありがとうございます! (2020年4月27日 15時) (レス) id: faea9d84a4 (このIDを非表示/違反報告)
たくあん - 完結おめでとうございますゥ(´;ω;`) (2020年4月27日 15時) (レス) id: a353fd29dc (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - ありがとうございます!! (2020年1月19日 18時) (レス) id: 41deac151f (このIDを非表示/違反報告)
入間(プロフ) - えむさん» 初めまして。ありがとうございます!出来れば更新をもっと増やして行けたらなと思います! (2020年1月19日 17時) (レス) id: faea9d84a4 (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - 初めまして、突然すみませんこのお花とても面白くて大好きです!また宜しければ更新楽しみにしています! (2020年1月18日 20時) (レス) id: 41deac151f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:入間 x他1人 | 作成日時:2019年10月26日 23時