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「渡辺さん」
『……』
「……渡辺さんもうすぐ撮影なので起きてください！」
『……今目開けようとしてたじゃん』
いや、素直にありがとうって言えよ。
もちろんそんなこと言える訳ないし、グッと気持ちを抑え込む。
ああ、私はなんて大人なんだろう。
『てかさ』
「何ですか」
『もっと普通に起こせないの？』
「……はい？」
『名前呼んでも起きないからでかい声出すってガキすぎない？』
この人は、一言多いどころの騒ぎじゃない。
それ絶対に言う必要なかったよね、うん。
「……渡辺さんが子供だから精神年齢合わせたんですよ」
『はあ！？』
この最悪の空気の中でも、楽屋の空気はいつもと変わらない。
向『ほんま仲ええなあ、ふたり』
渡『仲良くない』
佐『まじ楽しそうに喧嘩するよね』
「楽しくないです」
ものすごく失礼なことを言うようだけど、変な人の周りには変な人しかいないのか。
何をどうしたら今のやり取りが仲良さそうに見えたり楽しそうに見えるんだろう。
深『夫婦喧嘩なんだよなあ(笑)』
「「夫婦じゃない！」」
……最悪だ。
私たち以外がにやにやしてるのも含めて、全部最悪。
渡『真似すんなよ』
「……いいから早く撮影向かいますよ」
この人のことを、アイドルとして認めていない訳じゃない。
上からにはなるけど、大人気なのも頷けるというか。
だからこの仕事を辞めてないし、何とかやれている。
相手が悪かったぐらいで、退いてやるものか。
渡『あのさ』
それに、この人だって良いところの一つや二つ。
渡『朝から思ってたんだけどさ、太った？』
……ありません！
宮『翔太の勘違いだから、気にしないでね』
「……私宮舘さんのマネージャーが良かったです」
宮『俺は大歓迎だけど、翔太のマネ務まるのはAさんだけだよ(笑)』
「……」
宮『似てるからね、ふたりは』
あの5歳児に抱いている感情が、いわゆる同族嫌悪だなんて私は絶対に認めません。
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作者名：ざりがに
| 作成日時：2021年4月4日 1時
