52 ページ2
.
〜貴方 side〜
私の家がすごく遠いから、
望くんの家に泊まることが多くなった。
望くんの家に、どんどん私のものが増えていく。
「今日何時に帰ってくるん？」
『12時過ぎには帰ってくるよ』
「んー……」
好きな人と、一緒にいるのに
夜になると別な男の人と体を重ねる。
そんなおかしな日々。
望くんは私を抱きしめて
「……気をつけてな、」とだけ呟いた。
……きっと、思うことはもっとあるだろうに
色んな感情を押し殺してそう言ってくれる。
『……望くん、ごめんね』
「……んーん。しょうがないことやもん。我慢する」
『……ありがとう』
好きな人に抱きしめられた後に
別な男の人に抱かれる。
痛い、
望くんくんは、もっと優しくしてくれた
私のことを想ってくれた
でもこの人は、
お金で繋がっただけの関係。
私のことを汚い欲の捌け口にしか思っていない。
「またね、Aちゃん。次会えるのは明後日だね」
『……はい』
「ふふっ、楽しみにしてる」
『私も、楽しみにしてます』
タクシーを降りて
1ミリも思っていないお世辞を言う。
男の人は気味の悪い笑顔を浮かべた。
去るタクシーを横目で見て
私は望くんの家に帰る。
望くん、起きて待っててくれるのかな
0時5分。
季節はもう11月。
……あと少しで、
おじさんに借りていたお金全額返せる。
そしたらこんなことやめて
普通にバイトをしながら、普通に暮らしたい。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 190人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ハルカ | 作成日時：2022年10月18日 18時
