愛していると、【桃】 (ページ7)

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～貴方 side～

道端からどうやってここに来たのか
微かに覚えている。

こたきくん、という人におぶられてここに来た。

目を覚ますと
部屋には誰もいなくて。

代わりに温かい布団と
おでこに熱さまシート。

少ししてこたきくんが部屋に来た。

体温は39.1℃。

「薬飲んだ方がええやんな……お粥食べれそう……？」

『おかゆ……、』

「てかもう作ってあるから持ってくるわ。横になって待ってて」

パタン、と静かに扉が閉まる。

また1人になった部屋。

なんで、私なんかに優しくしてくれるんだろう

……大学のみんなにバレてしまったのは知っている。

私が体を売ってお金を稼いでいること。

今日講義室に入ったときの視線。

みんなの話し声。

忘れたいのに、嫌でも思い出してしまう。

そのとき、

「……橋本さん、起きれる？」

『……うん、』

扉が開いて、こたきくんの声。

私は起き上がった。

こたきくんはお盆を持って床にしゃがむ。

ほのかに湯気がたつお粥。

「猫舌……？」

『ううん、平気』

「……じゃあ……」

こたきくんから器とスプーンを受け取る。

『……ありがとう』

「ううん。それ食べたら薬飲んで寝てな」

嫌なことが、あったから。

人の優しさに甘えたくなったのかもしれない。

『ありがとう、こたきくん』

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